Premium Contents

AppsFlyer Japan鈴木様インタビュー アプリマーケティングの現状と未来

2021.08.06Premium Contents
AppsFlyer Japan鈴木様インタビュー アプリマーケティングの現状と未来

(右)AppsFlyer Japan Director of Sales 鈴木 哲郎氏
(左)GMO NIKKO 取締役 椎名 亮

AppleのiOS 14アップデートに伴い、広告トラッキングの許諾はAppTrackingTransparency (ATT) システムによって管理されるようになります。この影響を受けて今後のアプリマーケティングはどのような変化が求められるのかAppsFlyer Japan鈴木様にインタビューしました。

ATT対応の現状について

椎名:まず初めにiOS14でATTが導入されて、何か今実感されている市場の変化ってありますか?

鈴木:はい。市場の変化については大きく2つの側面があると思っています。

まず1つはユーザーに対しての影響です。これは基本的にポジティブな影響になります。その理由としては、ユーザー自ら端末内のアプリにおいてプライバシーのコントロールが可能になったということ。その上でどう利用するのか取捨選択ができるようになったので、これはユーザーにとって非常にメリットがあることです。

もう1つの側面として、アプリディベロッパーやパブリッシャー、そしてマーケターの方々にとってマーケティングを進める上で非常に大きな影響があります。まずATTの許諾が取れないと取得可能なIDの母数が減るため、今まで行なってきたマーケティング活動に大きく制限が出てきます。特に広告プロモーションにおいて、リターゲティングに頼る部分が多かったアプリであれば、マーケティング戦略を大きく見直さなければいけないことも考えられます。

あとはATTの許諾が取れなかった場合、大きく分けて2パターンの対応方法があります。IDFAが取得できなかった場合に、AppsFlyerが提供する確率論的モデリング*を利用してIDマッチング以外の方法を行う場合、またはAppleの提供するSKAdNetwork(以下SKAd)という代替手段を利用する必要があります。ここに対しての対応が各企業に求められます。
 
*アトリビューションに必要な情報のみを取得し、個人を特定せずにどのメディアソースから成果が発生したかの計測を行う。端末IDマッチングの場合と比較しても精度は95%以上。

2

椎名:御社がリリースされているATTダッシュボードは常にアップデートされていると思うのですが、ATTの実装率が直近で結構増えていて現状18%になっています。(注:6/24 インタビュー時点)現時点で18%の導入率って、多いのでしょうか?それとも少ないのでしょうか?

鈴木:前提として、こちらのダッシュボードのデータは世界で70%のマーケットシェアを持つAppsFlyerのSDKを導入している、様々なジャンルのアプリを元にしています。アプリの中にはIDFAの取得をそもそも行っていない、つまりATTの実装が不要なものもあるので、18%の実装率が低いか高いかは一概には言えませんが、ATTを全面的または部分的に実装しているアプリに関して言うと約40%となり、実装率もATTの発表以来増えてきています。

このATTの実装の対象となるiOS14.5以降のバージョンの端末普及数も、4/26のATT開始直後は20%程度だったのが、6月一週目にiOS14.6の自動アップデートが開始してからは70%ぐらいまで増加しました。Appleの今までのメジャーアップデートの傾向ですと、新しいiOSのリリースから1ヶ月で大体9割のユーザーがアップデートを完了します。その傾向から予測すると、おそらくこの記事が掲載される7月には、市場の中でのiOS14.5以降のアップデート率は9割近くになり、マーケッターの方たちにとってSKAdへの対応もかなり進んでいる、もしくは課題を感じられている状況ではないでしょうか。

ATT取得の現状

椎名:ATTが本格的に始まって広告主様がiOSの広告予算に対するプライオリティの比重を変えてきているとか、そういう実態は何か御社の方で把握していますか?

3

鈴木:弊社でもデータを取得しメディアに対する広告費のアロケーション割合は常にモニターしているのですが、iOS14.6のアップデートが始まってから、比較的大きく変動していることが確認できています。

まず全体的な傾向でいうと、4月26日のATT本格開始直後は、iOSのパフォーマンスが今後どうなるかわからない状況で広告主も少し様子を見ていたと思われ、iOS出稿割合が低くなりAndroidに寄っていた印象がありました。ただ、4/26以後ユーザーの14.5へのアップデートが思いのほか進まなかったこともあり、そこから1、2週間後ぐらいでまた元通りになりiOSの割合が一気に増えました。

椎名:それはiOSがパフォーマンス的にそんなに落ちなかったということでしょうか?

鈴木:そうですね。少なくとも5月中は全体的にiOS・Androidのパフォーマンスや予算アロケーションに関して大きな影響はありませんでした。大きく変わってきているという印象は最近になってからですね。

4

椎名:パフォーマンスの測り方はIDFAとSKAdの計測を並走するパターンが今のところ一番多いですか?

鈴木:はい。ここも広告主様それぞれによって方法は異なるとは思いますが、使い分けが重要です。IDFAが取得できた場合は従来どおりのIDマッチングによる計測方法を継続し、取得できなかった場合に、前述した確率論的モデリングによる計測、またはSKAdによる計測のどちらかの選択が迫られます。
また、ここで肝心なのが、確率論的モデリングでは計測できずにSKAdによる計測が必須となる媒体があるということです。例えばGoogle、Facebook、Twitter、SnapなどのSRN(セルフレポーティングネットワーク)と呼ばれる媒体では従来からIDマッチングのものしか計測していませんでした。となると、IDマッチングができなかった場合、SKAdが唯一計測可能な手段となります。

つまり、基本的には我々のようなMMP(モバイル計測プラットフォーム)による計測とSKAdは、どちらかに一本化できるということではなく、媒体に合わせて2つの方法を併用し、別の観点を持って今後使っていただくということが必要になると思っています。

野球の試合に例えると、1つの試合の中に別のルール、判断基準を持った審判が2人いるという状況です。なので、これはどちらかのルールに合わせるというよりかは、それぞれの審判が判断するデータを見ながら全体的なマーケティングの方向性を決めていくというやり方が現状において最も正解に近いのかなと思います。

椎名:IDFAがどれだけ取得できるのか?の変化は今後興味深いところですね。ATTを実装して、ユーザー側のオプトイン率もすごく重要になってくると思うのですが、iOS14.5以降のオプトイン率は現状どのように推移しているのでしょうか?

5

鈴木:日本のATTのオプトインレートは現在、大体3割から4割ぐらいです。ただ、これはアプリのジャンルやタイトルによってもまちまちです。少々意外かもしれないですけど、例えばUSとかUKのような他の主要マーケットと比べると、実は日本のオプトインレートは大体10ポイントぐらい高い状況です。

椎名:日本は個人情報の扱いに対してはより敏感な気がしますが意外ですね。

鈴木:そういうイメージですよね。でも、実際データが示す内容は他国のマーケットより高いです。あと、ATTオプトイン率はiOS14.6以降になってから徐々にではありますが増えている状況です。
おそらく、14.6の自動アップデートが始まったことによって、意識せずに許諾を行うレイトマジョリティユーザーのオプトイン率が増えてきたのではないかと考えています。

椎名:興味深いですね。レイトマジョリティのユーザー層は個人情報の取り扱いに対してそこまで危惧しているわけではないということなのでしょうか?

鈴木:やっぱりITリテラシーが高いユーザーは、きちんとポップアップの内容を見て、ATTを許諾することによりどういったことが起きるのかということを理解した上でアクションを起こしているのだ思われます。そのアプリが本当に好きで利用しているユーザーで、そのユーザーと充分なエンゲージメントが熟成されていれば、許諾する方が多いのではと見ています。

椎名:ユーザーが許諾することで、アプリのサービスをより便利に利用することができると感じてもらうことができれば、オプトイン率を高めることが出来るというところはすごくわかるのですが、それ以外にオプトイン率を高めるために打つべき対策はありますか?

鈴木:アプリのジャンルやタイトルによっても状況が大きく異なるので、我々の立場からは確実にこれをやった方がいいですということは言えないのですが、計測ベンダーの立場としてはできる限り早いタイミングでポップアップを出すことを推奨しています。
これはATTを表示して許諾が取れたタイミングからアプリイベントとしていろいろなファクトが計測できるようになるからです。また、様々なアプリパブリッシャーさんと話している中で、表示するタイミングについては皆さん試行錯誤されていますが、ある程度アプリの中でユーザーとのエンゲージメントが熟成されたタイミングで表示を行うことで実際許諾率が上がった、という声も聞きます。

例えばゲームでいうと、ユーザーがチュートリアルをクリアしたタイミングです。ニュースアプリでは、ユーザーが何本かのニュースを見てアプリ内の回遊にも慣れたタイミングで表示している例もあります。ただこれは「本当にどこがベストか?」というところは各アプリ異なりますので、やはりABテストをしながらしっかり見定めていく必要があります。

もう1つは、データ提供の許諾をすることでユーザーにとってどういうバリューがあるのかというところをちゃんと説明するのは本質的に重要だと思っています。ATTポップアップを出す前にプリパーミッションを出して、ポップアップの中だけでは訴求しきれなかった内容をしっかりと言語化し説明していく。それによって許諾率が上がったという話もありますね。

6

椎名:プリパーミッションも多くのアプリで見かけるようになってきましたね。
なぜ許諾したほうが良いのか?をユーザーに理解してもらう上で、デフォルトのATTダイアログの内容だけでは十分では無いと感じています。
そのためにも有効なプリパーミッションを活用していくことは必須の対策と言えそうですね。

鈴木:そうですね。取得したユーザーのデータがどのように活用されるのか?ユーザーにとって提供する価値は何か?ということをしっかりと理解してもらうことが大切です。
ATTポップアップの文言だけを見ると、デフォルトでは多くの場合単に「あなたのデータにアクセスさせてもらいますよ」という言い方なので、しっかり意図が伝わらずにユーザーに誤解を与えてしまいかねません。プライバシーに敏感なユーザーだと、その後自分にとって何が起こるのか、不安を与えてしまいますよね。

椎名:取得したデータが有益に活用されて、結果的にユーザーエクスペリエンスの向上につながるということを理解してもらうことが重要なのですね。そのためにもプリパーミッションの活用手段はオプトイン率を高めるための重要なファクターだと言えそうですね。

アプリマーケティングの広告評価について

椎名:我々もこれから直面していくであろう広告に対するKPIの考え方についてお伺いします。iOSに対する今後の広告評価の方法について御社としてどのように考えられてますでしょうか?

鈴木:基本的には我々AppsFlyerのようなMMPと、SKAdNetworkの両方の評価を見ていく必要があるというのは大前提です。

iOSのパフォーマンスの可視化がSKAdNetworkとATTの登場によって難しくなっています。なので、その見えない部分を補うために、現在のAndroidのパフォーマンスを参考にして推測を行う、または4月26日以前、つまりATT開始以前のiOSパフォーマンスを参考にしながら今後のiOSのパフォーマンスを予測分析していくという視点も今後重要になるのではと思います。

椎名:それ以外ですと、出稿費用に対するiOS経由の全体売上伸び率の相関性を見ながら、ROAS観点で評価することもこれまで以上に重要になってきそうですね。

7

鈴木:はい、様々な工夫が必要です。
また、どういう媒体でプロモーションをしているのかでも計測方法は全く異なってきます。
先程申し上げたSRN(セルフレポーティングネットワーク)と言われる媒体ではIDFAが取得できなかった場合、SKAdNetworkに頼らざるを得ません。

それ以外の媒体は基本的にはリダイレクトで計測をしていますので、これまで通り、確率論的モデリングなどIDマッチング以外の方法で計測できます。つまり、別にSKAdNetworkがなくても、従来通りAppsFlyerで計測ができます。

そうなるとAppsFlyerとSKAdの両方で計測したデータを見て、それぞれ意思決定していくことになるのですが、気を付けなければいけないのは、すでにお話ししたようにこの2つは全く違う判定基準をもった審判なので、両方の計測結果を合算して判断してはいけないということです。

椎名: SKAdとIDFAそれぞれで別のKPIや目標値を設定して考えていくということですか?

鈴木:よりマーケティングを細かく見ていく必要があると思っています。IDが取れる場合は今まで通りの計測手法でIDFAを軸にしたマーケティングを実行していく。IDが取れなかった場合は確率論的モデリング、またはSKAdでの計測を行う。これは利用する媒体によって判断する必要があります。このような切り分けが必要です。そしてそれぞれの場合ごと、媒体ごとにKPIを分けるという考え方もあると思います。

あと、SKAdによる計測の場合、今まで通りのROASやLTVの計測がしにくくなるので、そこはCPIなどのようにあえてシンプルなKPIを設定し、今までのデータを基に類推していく観点も必要になるかと思います。

実はAppsFlyerでも今期中にSKAdに関して予測データのソリューションのローンチを控えています。キャンペーンが中期的に考えてどれぐらいパフォーマンスが期待できるのか、それぞれスコアリングを行い、そのスコアを見て中期的なキャンペーンやメディアの最適化ができるようになります。

椎名:それはAppsFlyerを導入しているパブリッシャーさんであれば、それをそのまま使えるんですか?

鈴木:もちろんです。現在すでにお使いいただけるSKAdの専用画面に実装される予定です。

椎名:それは強力な武器になりそうですね!

これからのアプリマーケティングの未来について

8

椎名:これまでiOSの話中心でしたが、Androidへの波及が気になります。Android12からトラッキング制限をかけていくのでは?という記事を目にすることもあるのですが、実際今後AndroidもiOSのATTのような流れになるのでしょうか?

鈴木:ちょっと違う角度からお話させていただくと、このマーケティングの流れってSDGsに対する世の中の流れと似ていませんか?
実際、ついこないだまでコンビニで袋をもらうのも無料が当たり前で、コンビニ袋にお金を払うようになる日なんて想像もしていなかったのに今では有料が普通になり、多少不便でも環境に良い行動ということで皆さん日常となりましたよね。それと同じようにユーザーデータプライバシーの問題も本当はしっかりと考えなきゃいけないことなのにこれまではアドテクの技術やマーケティングの利便性だけが注目され、隅に追いやられてきたんだと思うんです。マーケターも広告プラットフォームも、わかっていながらユーザーのプライバシー問題に対して見て見ぬ振りをしてきたというか。

いざ端末IDが使えなくなっても、AppleからSKAdという代替手段が用意されたように、AndroidもGoogleが何かしら代替手段を出して新しいマーケティングフレームワークが確立すると思っています。
なので、Apple、Googleに関わらず、今後プライバシーに対してケアする流れは不可逆的ですし、しばらくしたら間違いなく新しいスタンダードの方法が確立されると思います。

椎名:確かにそうですよね。ここまでGoogleが影響力を持ったからにはプライバシーに対する取り組みを強化しないという選択肢は企業としてないんだろうなと思いますね。

鈴木:はい、なので、環境に対する流れと一緒で、プライバシーを大事にする考えが前提としてある中で、マーケティングをどうするか考えていかなければいけないという時代がこれから間違いなく来ると思います。

iOSのATTでマーケターの皆さんは今とても苦労しているとは思うのですが、iOSを試金石に今後Androidでもどうするべきか先を読んで考えないといけないタイミングでもあります。

椎名:たしかにゲームチェンジが起きたこのタイミングをきっかけにして新たなマーケティングのフレームを作っていければいいですよね。

鈴木:そうですね。とはいえマーケターのiOSまわりの悩みを少しでも軽減するために、先程例を挙げたようなSKAdでのデータ予測機能など、AppsFlyerとしてもプロダクト開発への投資は更に強めています。

我々は、マーケターの皆さんにとって価値のあるユーザーがどこからアプリに来てアプリの中でどのような価値を生み出しているのかを可視化するための存在です。その基本スタンスは今後も変わらずに、マーケターの皆さんにこれからも新機能を提供していきますので楽しみにしていてください!

椎名:楽しみにしています。本日は、貴重なお話しありがとうございました!

9

TRUE MARKETING編集部
ライター:TRUE MARKETING編集部
  • twitter
  • facebook
  • LINE