【2025年最新】デプスインタビューとは?本音を引き出す調査手法の基礎と活用法

企業が商品開発やサービス改善を行う際、表面的なアンケートだけでは顧客の本音や行動の背景までは掴みきれません。顧客の深層心理を明らかにしたい場合には、1対1の対話を通じて内面に迫る「デプスインタビュー(深層インタビュー)」が有効な手法となります。
デプスインタビューは、1対1の対話を通じて、回答者の意識の深層にある動機や価値観を掘り下げる調査手法です。本記事では、基本的な定義から実施のポイント、活用例、他の調査手法との違いまでを体系的に解説します。
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目次
デプスインタビューとは?
デプスインタビューとは、定性調査の中でも“深く聞く”ことに特化した手法で、回答者1人に対して調査員(インタビュアー)が1対1で行うインタビュー調査です。自由回答形式を用いながら、対象者の内面にある考え・感情・動機を引き出すことを目的とします。
- 定量調査では得られない“感情”や“理由”に迫れる
- 対面、オンラインのいずれでも実施可能
- 構造化された質問ではなく、柔軟な流れで進行
広告や商品の受容性、サービスの不満要素など、表面的なデータでは見えない“なぜそう思ったのか”に光を当てる調査として重宝されています。
デプスインタビューの実施ステップとポイント
デプスインタビューを成功させるには、事前の設計と当日の柔軟な対応が極めて重要です。目的に沿った質問設計や適切な対象者の選定だけでなく、インタビュー中の空気づくりや記録体制など、調査全体の流れを見越した準備が求められます。
以下では、具体的なステップとそれぞれの実施時に意識すべきポイントを紹介します。
- 目的の明確化と質問設計
「何を知りたいのか」を起点に、オープンな質問を準備します。 - 対象者リクルーティング
条件に合った回答者を事前にスクリーニングし、必要な属性を揃えます。 - インタビュー実施(60分前後)
共感的な態度で聞き手に徹し、深掘りのための“なぜ?”を投げかけます。 - 録音・録画・文字起こし
後の分析のため、記録は必須です。必要に応じて観察メモも活用します。 - 分析とレポート作成
語られた内容の背景や共通点を整理し、洞察としてまとめます。
他の調査手法との違い・使い分け
調査の目的や対象者、得たい情報の性質によって、適した手法は異なります。ここでは、デプスインタビュー・グループインタビュー・アンケート調査・パネル調査の4手法について、主な違いを比較します。
比較項目 | デプスインタビュー | グループインタビュー | アンケート調査 | パネル調査 |
形式 | 1対1の対話形式 | 1対複数の討論形式 | 無記名・自由/選択式 | 継続的なアンケート配信 |
得られる深度 | 高い(深層心理の把握) | 中程度(多様な意見) | 低い(表面的) | 中程度(時系列での変化) |
実施人数 | 少人数(5〜10人) | 中規模(6〜8人/回) | 大規模(数百〜数千人) | 大規模(数百〜数万人) |
主な目的 | 潜在意識の解明 | 意見の比較・共鳴点の抽出 | 傾向の定量把握 | 習慣・変化の定点観測 |
データの特徴 | 質的・個別性が高い | 発言の相互作用がある | 数値データ中心 | 長期・連続性があるデータ |
向いているテーマ | 感情・価値観・動機の深掘り | 商品や施策の印象比較 | 属性別の数値傾向把握 | 時系列での行動や意識変化の検証 |
たとえば、「なぜその商品を選んだのか」といった意思決定の背景を探る場合には、デプスインタビューが最適です。反対に、幅広い層から効率的に数値を集めたいならアンケート調査が適しています。複数人の意見の相互作用を見たいときはグループインタビュー、そして時系列での行動変化や長期的な嗜好の把握をしたい場合にはパネル調査が有効です。
目的やリソース、得たいデータの性質に応じて、それぞれの手法を適切に使い分けることが、調査の成果を最大化する鍵となります。
デプスインタビューのメリット

回答者の内面に迫ることができる
デプスインタビューの最大の特長は、回答者の思考や感情の深い部分にアプローチできる点です。自由回答形式の対話により、「なぜそう感じたのか」「どうしてその選択をしたのか」といった無意識下の動機や価値観が引き出されます。選択肢に限定されない分、表現がより自然で具体的になり、生活者の本音に迫るインサイトが得られます。特に定量調査では掴みにくい、感情の揺らぎや矛盾を捉える上で非常に有効です。
少人数でも十分なインサイトが得られる
インタビュー1件あたりで得られる情報量が多いため、5〜10名程度でも傾向や背景要因を把握することが可能です。全体の傾向よりも“深さ”を重視する場面に適しており、小規模な予算や短期間の調査でも有用な結果が得られます。また、回答内容の質が高いため、仮説検証や新たな課題発見にもつながりやすく、効率よく本質的な情報を収集できます。
対話の中から新たな気づきが得られる
あらかじめ設計した質問に加えて、インタビュー中に出てくる言葉や話の展開によって、新たな論点や示唆が生まれることがあります。質問項目に縛られず自由に話を進められるため、回答者自身も気づいていなかった感情や背景を言語化する場面が生まれることもあります。こうした発見は、施策立案や商品改善のヒントとして非常に価値の高いものです。
デプスインタビューのデメリット

インタビュアーのスキルに依存しやすい
インタビュアーの力量が調査結果に大きく影響する点は、デプスインタビューの難しさのひとつです。質問の流れや言葉の選び方、相手の発言への反応などが適切でないと、十分に深掘りすることができません。誘導的な質問をしてしまったり、反応が乏しい場合は、回答者が安心して話せず表面的な会話で終わってしまいます。高い傾聴力と柔軟な対応力が求められるため、トレーニングを受けた実施者が望ましいです。
統計的な一般化が難しい
デプスインタビューは本質的に「個の深掘り」に特化した手法のため、そこから得られた知見を全体の傾向として一般化するのは困難です。たとえば、10人のインタビューで共通点があったとしても、市場全体に当てはまるとは限りません。調査結果を過信せず、あくまで仮説の材料として活用し、必要に応じて定量調査と組み合わせることで精度の高い意思決定につなげることが重要です。
設計や準備不足だと成果が得られにくい
調査設計が不十分であったり、質問の意図が不明確なままインタビューを進めてしまうと、得られる回答は浅くなり、期待した情報にたどり着けない恐れがあります。また、適切な対象者を選べていないと、テーマに沿った本質的な意見が得られない場合もあります。さらに、記録方法が不十分だと、後の分析に活かせず情報が散逸してしまうため、実施前の設計や準備が調査の成否を大きく左右します。
デプスインタビューが使われる場面
消費者やユーザーの意思決定の背景にある価値観や感情、言語化されていない潜在ニーズを把握することは、商品開発やサービス改善の精度を高めるうえで非常に重要です。
定量調査では捉えきれない深層心理にアプローチできる点で、デプスインタビューは極めて有効な手法といえます。このセクションでは、代表的な活用シーンを2つ紹介します。
生活者インサイトの発掘
新商品やサービス開発の初期段階では、生活者の潜在的なニーズや価値観を把握することが不可欠です。デプスインタビューは、消費者の意思決定プロセスの奥底にある感情や背景を深掘りするのに適しています。
- 新商品の受容性テスト(例:なぜ買いたいのか/買いたくないのか)
- 購買動機やブランド選好の形成要因の理解
- サービス利用時の不満・違和感の掘り起こし
- 広告・キャンペーンへの印象・記憶の検証
「なぜそう思うのか」という問いを丁寧に重ねることで、単なるニーズではなく“価値観”や“ライフスタイル”に基づくインサイトが得られます。
センシティブなテーマの本音把握
定量調査やグループインタビューでは語られにくいテーマに関しても、1対1の安心感があるデプスインタビューなら本音を引き出すことが可能です。
- 退職理由や職場への本音を探る人事調査
- 医療・介護などプライベート性の高いテーマへの意識調査
- ライフイベント(出産、介護、転職など)の心理的影響の把握
- 社会的・文化的なタブーに関する実態理解
センシティブな内容でも、信頼関係を築きながら対話を重ねることで、表面的な回答を超えた深い洞察が得られます。
デプスインタビューに関するよくある質問(Q&A)
デプスインタビューの具体的な質問例を教えて
デプスインタビューでは、オープンエンドの質問を中心に「なぜそう思ったのか」「その背景には何があるのか」を探るような問いかけが有効です。以下は具体例です。
- 「この商品を選んだ理由を教えてください」
- 「購入を決めたとき、どんなことが頭に浮かびましたか?」
- 「そのとき、他に比較した商品はありましたか?最終的に選ばなかった理由は?」
- 「初めて使ったとき、どんな印象を持ちましたか?」
- 「〇〇という行動を取った背景には、どんな気持ちや状況がありましたか?」
- 「そのとき誰かに相談したり、周囲の意見は影響しましたか?」
事実を聞くのではなく、理由や感情の流れに焦点を当てるのがポイントです。
デプスインタビューの際の注意点は何?
デプスインタビューでは、以下の点に注意する必要があります。
- 誘導しない質問:回答を期待する方向に導く言い方は避けるべきです。中立的な姿勢が重要です。
- 沈黙を恐れない:回答者が考える時間を尊重し、間を埋めようと急いで質問しないようにします。
- 共感しすぎない:安心感を与えるのは良いですが、過度な共感は回答を歪める可能性があります。
- 事前準備を徹底する:調査目的、質問設計、対象者選定を曖昧にしないことが成果の鍵です。
- 録音・メモの体制を整える:振り返り分析の精度を上げるためにも、記録は確実に残します。
デプスインタビューと他のインタビュー方法の違いは?
他の代表的な調査手法との違いは以下の通りです。
手法 | 主な特徴 | 適している目的 |
デプスインタビュー | 1対1で深く話を聞く/感情や動機を掘り下げる | 潜在ニーズ・価値観の理解 |
グループインタビュー | 複数人で議論/相互作用により意見の多様性を引き出す | 認知の広がりや共通点の把握 |
アンケート調査 | 数百人以上の広範囲/定量的な傾向を分析 | 意識の分布や属性ごとの比較 |
パネル調査 | 同一対象に継続的調査/時系列データ | 意識・行動の変化の追跡 |
「なぜ?」を深く掘り下げたいときは、デプスインタビューが最も適しています。
デプスインタビューの成功事例を知りたい
たとえば、ある日用品ブランドでは、リニューアルした洗剤の評価が思わしくなかった際に、デプスインタビューを実施しました。
表面的なアンケートでは「香りが良くない」という意見があったものの、デプスインタビューで詳しく聞くと、「パッケージの色と香りのイメージが合っていない」「以前の商品が安心感があった」といった感情レベルでの不一致が判明。
その結果、デザイン変更とプロモーションの再構築を行い、売上をV字回復させたという事例があります。
デプスインタビューの際のインタビュアーの役割は?
インタビュアーは単なる質問者ではなく、「引き出し役」としての高度な役割を担います。主な役割は以下の通りです。
- 安心感を与える関係構築:話しやすい雰囲気づくりは回答の質を左右します。雑談も含めて空気を和らげることが大切です。
- 自由な語りを促す進行:想定通りに進めるのではなく、話の流れに柔軟に対応しながら深掘りしていきます。
- 感情の変化や言葉のニュアンスを読む:非言語情報も含めて、表情や間などから本音を探る観察力が求められます。
- 偏らず冷静に記録する:その場での評価は避け、発言内容を客観的に受け取り、記録することが重要です。
まとめ
デプスインタビューは、数値では表せない「人の本音」を把握するための有力な定性調査手法です。本記事では、デプスインタビューの基本的な定義から他の調査手法との違い・使い分けまでを網羅的に解説しました。
1対1の対話だからこそ見えてくる消費者の価値観や行動の背景は、商品開発やUX改善、ブランド戦略において重要なヒントとなります。注意点として、分析には主観が入りやすいため、インタビュアーの力量と設計の精度が成功の鍵を握ります。他の調査手法とうまく組み合わせることで、より立体的で納得感のある意思決定が可能になるでしょう。
分析結果が山ほどあるのに、成果につながらない…その原因とは?
- 分析手法やレポートだけが増え、作業時間ばかりが膨らんでいる
- “数字を見ているだけ”で、現場も成果も変わっていない
- 実は、“見るべき数字を絞っただけ”で売上が伸びた企業もあります
プロが教える、“本当にやるべき分析”と“見るべき指標”を聞いてみませんか?もっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
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