マーケティング戦略

【デザイン心理学】モンタージュ理論とは?SNSマーケティングやWeb広告に活かせる映像テクニック

【デザイン心理学】モンタージュ理論とは?SNSマーケティングやWeb広告に活かせる映像テクニック

動画広告やSNSのプロモーション映像を見て、「言葉にできないけど惹かれた」と感じた経験はありませんか?それは、映像そのものだけでなく、「映像の見せ方」──つまり編集の工夫によって、あなたの中に新たな意味や感情が生まれている証拠かもしれません。こうした現象を説明する理論のひとつが、モンタージュ理論です。本来、映画の編集技法として発展してきた理論ですが、近年では消費者の認知や感情に働きかけるマーケティング手法としても注目されています。今回は、モンタージュ理論の概要からマーケティングへの応用方法まで詳しく解説します。

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モンタージュ理論の定義

モンタージュ理論とは、複数の映像や画像を意図的に編集・連結することで、単体では生まれない意味や感情を視聴者に喚起させる映像技法のことです。

この理論は20世紀初頭、ソビエトの映画理論家セルゲイ・エイゼンシュテインらによって体系化されました。彼らは、映像同士の繋がりにこそ意味が宿ると考えました。例えば、ある人物の無表情な顔の後に「スープの映像」が続くと「空腹」と受け取られ、「棺の映像」が続けば「悲しみ」と解釈されます。このように、モンタージュによって映像に意味付けがされます。

モンタージュ理論の種類

連続モンタージュ

連続モンタージュは、時間・空間の流れを自然に見せる編集方法です。観客に違和感を与えず、物語や状況を理解させるのに効果的です。

例: 家を出る → 駅に向かう → 電車に乗る → 職場に着く、という一連のカットをつなぐことで、「通勤」のストーリーが無理なく伝わる。

衝突モンタージュ

衝突モンタージュは、あえて異なる映像を組み合わせて、新たな意味や印象を創出する手法です。観客の感情や思考を刺激するため、インパクト重視の広告などでよく使われます。

例: 笑顔の子どもの後に廃墟の映像を入れると、「過去の喪失」や「守るべき未来」など、複数の意味が読み取れる構成になる。

知的モンタージュ

知的モンタージュは、抽象的・概念的なアイデアを象徴的な映像で表現する手法です。映像の比喩性を通じて、視聴者に考察や共感を促します。

例: 木が成長する映像とともに企業の歩みを描くことで、「成長」「安定」「未来志向」といったブランドイメージを視覚化することが可能。

モンタージュ理論から分かる人間心理

このセクションでは、モンタージュ理論の定義や研究を通じて明らかになる人間心理を紹介します。理解を深めることで、マーケティング戦略への具体的な活用ポイントが見えてきます。

情報の「並び順」で意味が変わる

人間は、前後の文脈によって情報の解釈を大きく変えます。つまり、同じ映像でも順序が異なれば意味も変わるということです。これを最も端的に表すのがクレショフ効果であり、映像を「どう並べるか」は「何を伝えるか」と同義になります。

例: 「無表情な顔」+「ケーキ」の順なら「おいしそう」、同じ顔でも「火災現場」の後なら「悲しみ」に変わる。

断片を結びつけて「物語」を作ろうとする

人間の脳は、バラバラな情報でも関係性を見出し、ストーリー化しようとする習性があります。この性質が、モンタージュ編集の効果を支えています。

例: 商品映像と感動するユーザーの姿を交互に見せるだけで、「この商品は人を幸せにしている」というストーリーが自然に頭の中で構築される。

モンタージュ理論のマーケティングへの応用

動画広告

モンタージュ理論を活用することで、動画広告において視聴者の感情や理解を効果的に誘導できます。映像の編集によって、商品やサービスの魅力を印象付けることが可能です。例えば、新しい洗剤の広告で、汚れたシャツの映像の後に、洗濯機で洗われて真っ白になったシャツの映像を見せることで、洗浄力の高さを視覚的に訴求します。

新商品のプロモーション映像

新商品のプロモーション映像では、モンタージュ理論を用いて、商品の特徴や利点を視覚的に強調し、視聴者の興味を引きます。例えば、新しいスマートフォンのプロモーションで、日常生活の中でスマートフォンが活躍するシーンを連続して見せることで、製品の利便性や多機能性をアピールします。

ブランディング広告

ブランドのイメージや価値観を伝えるブランディング広告では、モンタージュ理論を活用して、視聴者にポジティブな印象を与えることができます。例えば、環境保護を訴求するブランドの広告で、美しい自然の映像と製品の製造過程での環境配慮の映像を組み合わせることで、ブランドの環境への取り組みを強調します。

モンタージュ理論の活用例

Web広告でのストーリー展開(連続モンタージュ)

Web上の動画広告では、連続モンタージュを用いて、短時間で効果的なストーリーを展開し、視聴者の関心を引くことができます。例えば、オンライン学習サービスの広告で、学生が勉強に苦労しているシーンから、サービスを利用して成績が向上し、志望校に合格するまでの過程を連続して見せることで、サービスの効果を強調します。

商品プロモーションでのギャップ演出(衝突モンタージュ)

商品プロモーションでは、衝突モンタージュを用いて、視聴者の興味や購買意欲を高めることができます。例えば、高級チョコレートの広告で、工場の無機質な製造ラインの映像の後に、手作りの温かみのある包装作業の映像を見せることで、機械的な製造と手作業のギャップを強調し、商品の特別感を演出します。

企業ブランディング動画でのメッセージ訴求(知的モンタージュ)

企業のブランディング動画では、知的モンタージュを用いて、企業の理念やビジョンなどを視覚的に伝えることができます。例えば、再生可能エネルギーを推進する企業の動画で、自然エネルギーの象徴である風車や太陽光パネルの映像と、企業の研究開発の映像を組み合わせることで、環境課題へ取り組む姿勢を示します。

モンタージュ理論のポイント

意図的に意味を生み出す編集を心がける

モンタージュ編集では、ただ映像をつなげるのではなく、視聴者がどのように解釈するかを想像したうえで、順番・組み合わせ・時間配分などを決める必要があります。特にマーケティング映像では、視聴者が製品やブランドに対してポジティブな印象を抱かせるための、編集による誘導が欠かせません。例えば、エシカルなブランドの紹介動画で、「工場の排煙」→「自然を破壊する様子」→「自社が行うクリーンな生産活動」の順に編集することで、「他社と違い、私たちは環境に配慮している」という意図を自然に視聴者へ伝えられます。

ターゲットの感情・想像力を引き出す設計をする

モンタージュの効果を最大化するには、視聴者の感情や想像力に訴えかけることが重要です。特定のシーンや象徴的なイメージを意図的に組み合わせることで、感情移入や共感を引き起こし、より深くメッセージを印象づけられます。例えば、就職支援サービスの広告で、「挫折する就活生」→「励ましの言葉」→「内定を受けて涙を流すシーン」とつなげることで、サービスの信頼感や利用者の心情に視聴者が共感しやすくなります。

モンタージュ理論の注意点

意図が伝わらないと逆効果になるリスク

モンタージュの編集は、視聴者の解釈に委ねられる面もあるため、伝えたい意図が曖昧だと誤解を生む危険があります。特に、抽象的な映像を多用しすぎると、視聴者が意図とは異なる意味に受け取ってしまう恐れがあります。例えば、「子ども」と「ゴミの山」の映像を続けて見せたつもりが、「貧困問題の訴求」ではなく「不衛生な環境で遊ぶ映像」と誤解され、ブランドイメージが傷ついたという事例もあります。構成前には、伝えたいストーリーラインと視聴者の想定反応を明確にしておくことが大切です。

過剰な演出でユーザーの共感を失うリスク

映像に過剰な演出や対比を用いると、逆に「わざとらしさ」や「押しつけがましさ」が生まれてしまいます。ユーザーは敏感に「広告臭」を感じ取るため、過度な演出はかえって共感を妨げる原因になります。例えば、家族向け商品の広告で、「事故に遭う子ども→助けに行く母親→製品の登場」といった極端な編集は、「感動の押し売り」として冷めた反応を招くことがあります。日常の小さな共感を描く方が、かえって信頼を得やすい場合もあるため、リアリティと物語性のバランスを意識することが重要です。

モンタージュ理論のよくある質問(Q&A)

モンタージュ理論を実践するための具体的なステップは?

まずは伝えたいメッセージを明確にし、それに沿って映像素材を集めます。その後、視聴者がどのように感じ、解釈するかを想定しながら、映像の順序やつなぎ方を設計していきます。編集段階では「この順番で本当に伝わるか?」を第三者に確認しながらブラッシュアップするのが効果的です。例えば、新商品PR動画で「Before(悩み)→サービス導入→After(解決)」という構成に沿って映像を並べると、自然な理解と共感を得られやすくなります。

モンタージュ理論とトランジションの違いは?

モンタージュ理論は映像の「意味」や「ストーリー構築」に関する考え方であり、映像をどう並べるかで新しい文脈を生み出すものです。一方、トランジションは映像と映像の間に使う「つなぎの演出効果(フェード、カットインなど)」を指します。両者は補完関係にありますが、目的が異なる点に注意が必要です。

モンタージュ理論とクレショフ効果の関係は?

クレショフ効果はモンタージュ理論を裏づける心理実験で、同じ映像でも前後のカットの違いによって視聴者の印象が変わるという現象です。例えば、無表情の人物の映像に「赤ちゃんの映像」を前に挿入すると「優しい人」と解釈され、「爆発の映像」を前に挿入すると「恐ろしい人」と感じるなど、視聴者の解釈は周囲の文脈によって変わります。この効果は、モンタージュの編集がいかに人間の認知に影響を与えるかを示しており、マーケティング動画においても活用されています。

まとめ

今回の記事では、モンタージュ理論の概要からマーケティングへの応用方法まで詳しく解説しました。モンタージュ理論は、映像の順序や組み合わせが人間の感情や解釈に影響するという前提に基づいた編集手法です。連続モンタージュ、衝突モンタージュ、知的モンタージュといったバリエーションを駆使することで、ブランドメッセージを印象深く伝えることが可能になります。誤解を招くような過剰な演出に気を付けながらクリエイティブな設計をすることで、消費者の信頼を得ることができます。皆さんもぜひ、モンタージュ理論を活用したコンテンツ作りを通して、消費者に商品や企業への共感を促してみてください。

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プロフィール
藤井翠
国際教養学部。 マーケティングに応用できる行動経済学や心理学の理論やフレームワークなどの解説記事を執筆。
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