マーケティング戦略

【2025年最新】SOMとは?TAMやSAMとの違いからビジネスへの活用方法を徹底解説

【2025年最新】SOMとは?TAMやSAMとの違いからビジネスへの活用方法を徹底解説

ビジネスの成長を目指す上で、最も重要な指標の一つが市場規模です。しかし、市場全体の規模(TAM)やサービス提供可能な範囲(SAM)だけを見ていては、現実的な戦略は立てられません。本当に必要なのは、自社が今、実際に獲得可能な市場を把握すること。そこで登場するのが、SOM(Serviceable Obtainable Market)という概念です。

SOMは、事業の実行可能性を見極めるうえで非常に実用的な指標であり、マーケティング戦略や資源配分、投資判断などにおいても大きな役割を果たします。本記事では、SOMの定義やTAM・SAMとの違い、具体的な計算方法、そして実際の活用方法と成功事例を交えながら、SOMの基礎から応用までをわかりやすく解説します。

SOMとは?

SOMの定義と基本的な考え方

SOM(Serviceable Obtainable Market)とは、自社が実際に獲得可能な市場規模を指します。TAMやSAMといった市場全体の指標と比較して、SOMはより現実的な範囲を示すため、事業計画やマーケティング戦略に直結する重要な概念です。

たとえば、自社が提供する商品やサービスが対応可能な市場(SAM)のうち、現在のリソースや流通、営業体制を考慮して実際にアプローチ可能な市場をSOMとして設定します。つまり、SOMは理論的な可能性ではなく、実行可能な可能性に焦点を当てた数値と言えます。

TAM・SAM・SOMの違い

市場規模を評価する際には、TAM(Total Addressable Market)・SAM(Serviceable Available Market)・SOM(Serviceable Obtainable Market)の3段階で考えることが一般的です。

市場セグメンテーションを示す扇形図。外側からTAM、SAM、SOMと段階的に縮小する3層の市場範囲が描かれている。
  • TAM(総市場規模):理論上、自社の商品・サービスが提供可能な最大の市場
  • SAM(提供可能市場):自社の製品特性やターゲット、地域条件などを加味した実際の対応可能市場
  • SOM(獲得可能市場):現在の営業力、認知度、競合状況を踏まえて、実際に取り得る市場規模

この3つは絞り込みの概念でつながっており、TAM → SAM → SOMと段階的に現実的な指標へと縮小していくことで、戦略性と実現性の両立が図れます。

SOMを活用するメリット

現実的な市場規模を把握できる

SOMを明確にすることによって、自社のポテンシャルを正確に把握することができます。たとえば、TAMが大きくても実際にリーチできる範囲が限られていれば、それは机上の空論にすぎません。SOMは、実働部隊やマーケティング予算、流通網などの現状リソースを前提に算出されるため、今、取りにいける市場が見えてきます。

これにより、経営判断や事業計画においても、地に足のついた戦略を描くことが可能になります。

リソース配分と事業計画の最適化

限られたリソースをどこに集中させるべきかを判断するうえで、SOMの存在は非常に有効です。たとえば、複数の市場機会がある中で、より獲得可能性の高いセグメントに資金や人員を優先的に投下する、といった判断が可能になります。

これにより、無駄な投資やリスクを回避し、短期的な成果につながる市場への集中戦略が実現できます。結果として、事業のスピード感と効率性を両立させることができます。

投資家・社内向け資料の説得力が高まる

スタートアップや新規事業では、SOMの数値を明確に示すことで、投資家や経営陣への説明に説得力が生まれます。どれだけ大きな市場があるかだけでなく、どれだけ自社が実際に取りにいけるかを具体的に提示することが、資金調達や意思決定のスムーズな推進につながるのです。

また、社内メンバーへの共有や方針説明においても、SOMを基準に話すことで一貫性と納得感のある戦略立案が可能となります。

SOMの計算方法

トップダウンアプローチの考え方

トップダウンアプローチでは、まずTAMやSAMといった広義の市場規模を調査データなどから把握し、そこから段階的に絞り込んでSOMを導き出します。

例えば、政府統計や民間の市場調査レポートから得られる業界全体の規模(TAM)に対し、自社が対象とする地域・業種・年齢層などのフィルターをかけて提供可能市場(SAM)を算出します。さらに、競合の状況や自社のシェア獲得見込みを加味して、最終的なSOMを見積もるという流れです。

市場データが豊富にある場合に適したアプローチです。

ボトムアップアプローチの活用例

一方で、ボトムアップアプローチは、自社の営業活動や販売実績など、足元の具体的なデータからSOMを積み上げていく手法です。

たとえば、営業1人あたりが月に10件の商談を獲得できるとした場合、営業部門全体で年間どれだけの商談数を持てるかを試算します。さらに、商談から受注へのコンバージョン率や単価をもとに、年間でどれだけの市場を獲得できるかを見積もることで、SOMを算出します。

成長段階の企業やデータが限定的な状況では、こちらの手法が現実的です。

実際の計算ステップと注意点

SOMを算出する際は、次のようなステップで進めるとスムーズです。

  1. 自社の対象とする市場全体(TAM)を把握する
  2. サービス提供可能な範囲を定義し、SAMを算出する
  3. 営業力・販売チャネル・認知度などを加味して、SOMを見積もる

注意点としては、過大評価しないことが重要です。過信してSOMを大きく見積もると、実態と乖離し、経営判断にズレが生じる恐れがあります。現場の実績やデータに基づいた、現実的な算出を心がけましょう。

SOMを活用したビジネス戦略の立て方

新規事業立ち上げ時の市場評価

新規事業を検討する際、最初に重視すべきは市場に勝機があるかどうかです。ここで有効なのがSOMの活用です。TAMやSAMだけでは理論上の可能性は見えても、今この条件で本当に取りにいける市場は明確になりません。

SOMを用いて現実的な市場規模を見積もることで、ビジネスモデルの妥当性を検証できるだけでなく、事業化するか否かの判断軸も明確になります。また、初期段階からSOMを踏まえた事業戦略を立てることで、限られたリソースを無駄なく配分できるのも大きなメリットです。

既存サービスの成長可能性を見極める

すでに提供しているサービスに対しても、SOMは成長余地の有無を測る指標として有効です。現在の売上が市場全体に対してどの程度か、今後どれほどのシェアが見込めるかを、現実的な観点から見直すことができます。

たとえば、リーチできていない顧客層や地域がある場合、それを新たなSOMとして設定し、具体的な施策に落とし込むことで、既存事業を次のステージに引き上げる道筋が見えてきます。

マーケティング施策への応用

SOMはマーケティング戦略にも大きく貢献します。ターゲット市場の明確化に加え、広告費や人員配置など、各施策の配分をSOMに基づいて最適化することが可能です。

例えば、広告運用においても、SOMの数値を基準にターゲット設定を行えば、より効率的なリード獲得が期待できます。さらに、KPIの設計にもSOMが役立ち、どのくらいの市場をいつまでに獲得するかといった、定量的で実行可能な目標を立てやすくなります。

SOMを活用した成功事例

D2C企業が海外展開に成功した事例

ある日本発のD2Cコスメブランドは、国内市場のSOMが飽和しつつあることに気づき、海外展開を模索しました。現地市場のTAMやSAMを調査した上で、物流や言語対応、広告チャネルなどを加味し、アメリカ市場でのSOMを再計算。

この現実的なSOMに基づき、インフルエンサー施策やECプラットフォーム選定を行った結果、参入初年度で現地売上比率が全体の20%に達しました。SOMを根拠とした市場選定と戦略設計が成功の鍵を握った好例です。

SaaS企業の新市場進出による成果

BtoB向けの業務管理SaaSを提供するある企業は、従来の中小企業向けから、士業や医療法人といった新しいターゲット業界への展開を計画していました。そこで、各業界のSOMをデータベースや業界白書を活用して精緻に試算。

機能の一部カスタマイズと専用サポート体制を構築することで、リーチ可能性の高い領域にリソースを集中。その結果、参入から1年で新市場での契約数が全体の15%を占めるまでに成長しました。

SOMに関するよくある質問(Q&A)

Q.SOMはなぜTAMやSAMよりも重要視されるの?

A.TAMやSAMは理論上の市場規模であり、あったらいいないけたらすごいなの領域を示すに過ぎません。一方、SOMは現実的に今、自社が取れる市場規模を示すため、戦略設計やリソース配分、投資判断など、実務レベルでの意思決定に直結します。

夢のある大きな数字よりも、実現可能な数字を基に行動した方が、成果につながりやすいため、SOMが重視されるのです。

Q.SOMを算出するためのデータはどう集める?

A.SOMを正確に算出するには、外部と内部のデータを組み合わせて活用します。外部データには、政府統計、業界レポート、調査会社のレポートなどがあり、これらをもとにTAMやSAMを把握します。

内部データとしては、自社の営業実績、商談数、CV率、広告のクリック率などがあり、これらを使って現実的なシェア獲得可能性を評価します。両方の視点を持つことで、より精度の高いSOMが算出できます。

Q.BtoCとBtoBでSOMの考え方に違いはある?

A.基本的な概念は同じですが、BtoCとBtoBではアプローチに違いがあります。BtoCでは顧客数が多くデータが豊富なため、統計的なアプローチが有効です。一方、BtoBでは対象企業が限定的なため、個社ごとの詳細なヒアリングや商談履歴を元に分析を進めることが多くなります。

また、BtoBでは意思決定に関わる人数が多いため、SOMの中でも意思決定者へのリーチ可能性に注目した分析が求められます。

まとめ

SOM(Serviceable Obtainable Market)は、自社が現実的に獲得可能な市場規模を明確にするための重要な指標です。TAMやSAMと比較してより実行性が高く、戦略立案やマーケティング活動、資源配分、投資家への説明資料など、あらゆるビジネスシーンで活用できます。

トップダウンとボトムアップの両方の視点からSOMを正確に見積もることで、現実的な意思決定が可能です。また、成功事例からもわかるように、SOMをベースにしたアプローチは実際の成果にも直結します。

これから新規事業を立ち上げる方も、既存事業を見直す方も、まずは自社のSOMを見える化してみることが、成長への第一歩となるでしょう。

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プロフィール
中村淳之佑
経済学部。 スタートアップや業種ごとのマーケティング戦略や手法について解説記事を執筆。
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