【2025年最新】SNSなりすましとは?被害実態から法的対処法まで完全解説

SNSの普及と共に深刻化しているのが「なりすまし」問題です。
X(旧Twitter)、Instagram、FacebookなどのSNSプラットフォームで、他人の名前や写真を無断使用し、本人であるかのように振る舞う悪質な行為が後を絶ちません。総務省の発表によると、2024年以降、著名人や企業になりすました偽広告による被害が急速に拡大しており、一般個人への被害も増加傾向にあります。
この記事では、SNSなりすましの実態と対処法について、2025年現在の最新情報をもとに詳しく解説します。
目次
SNSなりすましの基本概念と現状
まずは、SNSなりすましとは何か、その定義と現在どのような被害が発生しているのかを把握しましょう。生成AIの進化により、誰でもターゲットになり得る時代になっています。
SNSなりすましとは?
SNSなりすましとは、ソーシャルメディア上で他人の身元を偽り、その人物であるかのように投稿やコミュニケーションを行う行為を指します。単純に似たような名前のアカウントを作成するケースから、本人の写真や個人情報を巧妙に利用した精巧ななりすましまで、その手口は多様化しています。
SNSなりすましの現状
現在のなりすまし被害の特徴として、従来の芸能人や有名人に限らず、一般個人や中小企業も標的となっている点が挙げられます。
特に注目すべきは、生成AI技術の発展により、なりすましがより巧妙化している点です。ディープフェイク技術を使った偽画像や、AIによる文章生成技術を悪用したなりすまし投稿が増加しており、被害者だけでなく第三者にとっても本物と偽物の判別が困難になっています。
なりすましの主要な手口と被害パターン
なりすまし被害といっても、その手口や目的はさまざまです。ここでは、現在特に多く見られる代表的な3つのパターンと、それぞれがもたらす具体的な被害について紹介します。

アカウント乗っ取り型
最も深刻な被害をもたらすのが、既存のアカウントを不正に乗っ取るタイプです。フィッシング詐欺やパスワードリスト攻撃により、本人のログイン情報を入手し、アカウントを完全に支配下に置きます。乗っ取られたアカウントからは、フォロワーに対する詐欺的な投資話や商品購入の勧誘が行われることが多く、被害者の信頼関係を悪用した二次被害が発生します。
偽アカウント作成型
本人と類似した名前やプロフィール写真を使用し、新たなアカウントを作成するパターンです。本人のSNS投稿から写真や個人情報を収集し、あたかも本人の別アカウントであるかのように装います。このタイプでは、本人の評判を貶めるような投稿や、詐欺的な投資勧誘、不適切な内容の発信が行われることが多く見られます。
企業なりすまし型
近年急増しているのが、有名企業や公的機関になりすましたアカウントによる偽広告配信です。著名な経営者の名前と顔写真を無断使用し、投資セミナーや仮想通貨投資への勧誘を行うケースが典型的です。
法的観点から見たなりすましの問題
SNSでのなりすまし行為には、どのような法律が適用されるのでしょうか?直接的な規制がない中で、関連法によってどのように責任が問われるのかを解説します。
適用される法律と罪名
SNSなりすまし行為自体を直接処罰する法律は存在しませんが、なりすましに付随する行為により、複数の法的責任が発生する可能性があります。
不正アクセス禁止法違反
他人のアカウントに無断でログインした場合に適用されます。2025年の改正により、罰則が強化され、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
名誉毀損罪
なりすましアカウントで事実に反する情報を公然と摘示し、他人の社会的評価を低下させた場合に成立します。刑法230条により、3年以下の懲役若しくは禁錮または50万円以下の罰金が科されます。
詐欺罪
なりすましを利用して金銭を騙し取った場合に適用されます。投資話での勧誘や商品販売詐欺などが該当し、10年以下の懲役が科せられる重大な犯罪です。
民事上の責任
刑事責任とは別に、民事上の損害賠償請求も可能です。なりすましにより精神的苦痛を受けた場合の慰謝料、経済的損失を被った場合の財産的損害賠償が請求できます。近年の判例では、個人の場合で10万円から100万円、企業の場合は数百万円から数千万円の損害賠償が認められるケースが増加しています。
被害発見時の初期対応手順
なりすまし被害に気づいたとき、最初に取るべき対応を誤ると、被害が拡大してしまう可能性があります。ここでは、被害時にまず行うべきステップを具体的に紹介します。
証拠保全の重要性
なりすまし被害を発見した際は、まず証拠の保全が最優先です。なりすましアカウントの投稿内容、プロフィール情報、フォロワー数などをスクリーンショットで記録します。投稿日時や拡散状況も重要な証拠となるため、できる限り詳細に記録することが重要です。
証拠保全時の注意点として、スクリーンショットだけでなく、可能であればWebページの保存機能を使用し、HTMLファイルとしても保存することを推奨します。これにより、より詳細な情報を証拠として残すことができます。
周囲への注意喚起
なりすまし被害が確認できたら、家族、友人、同僚など身近な人々に対して、偽アカウントの存在を速やかに通知します。この際、具体的な偽アカウント名やURL、見分け方を明確に伝えることが重要です。
企業の場合は、公式ウェブサイトやメール配信、プレスリリースなどを通じて、顧客や取引先に対する注意喚起を行います。被害拡大を防ぐため、迅速な対応が求められます。
プラットフォーム別削除申請方法
各SNSには、なりすましに対応するための通報や削除申請の仕組みがあります。主要プラットフォームごとの申請手順を分かりやすくまとめました。
X(旧Twitter)での対応

Xでは、なりすまし報告専用のフォームが用意されています。「設定とプライバシー」から「ヘルプセンター」にアクセスし、「なりすましアカウントを報告する」を選択します。本人確認書類として、運転免許証やパスポートなどの公的身分証明書の提出が必要です。
報告時には、なりすましアカウントのURL、具体的ななりすまし内容、被害状況を詳細に記載します。通常、報告から24時間から72時間以内に審査結果が通知されます。
Instagramでの対応

Instagramでは、アプリ内の「報告する」機能から、「なりすまし」を選択して報告します。ウェブ版では専用の報告フォームが利用できます。身分証明書の提出に加えて、なりすましアカウントと本人アカウントの比較画像の提出が求められる場合があります。
Meta社の方針により、明らかななりすましケースについては比較的迅速に対応されますが、微妙なケースでは審査に1週間程度要することもあります。
Facebookでの対策

Facebookでは、コミュニティ規定違反として報告を行います。「知的財産権」カテゴリーから「なりすまし」を選択し、詳細な被害状況を記載します。また、Web版では、専用フォームからなりすましアカウント報告できます。
TikTokでの対応

TikTokでは、なりすましアカウントを発見した際、「共有」ボタンから「報告する」→「アカウント」→「偽装・なりすまし」を選ぶことで通報できます。また、該当アカウントのプロフィールページからも同様の手続きが可能です。
ただし、TikTokでは国や地域によって対応基準や報告ルートが異なる場合があります。報告内容や状況によって必要な手続きも変わるため、まずは公式のヘルプセンターにアクセスし、自分のケースに合った適切な報告方法を選ぶことが重要です。
法的措置の具体的手続き
なりすまし行為に対して法的手段を講じる場合、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。発信者情報開示から損害賠償請求まで、必要なプロセスを詳しく解説します。
発信者情報開示請求
なりすまし犯人を特定するためには、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求を行います。2022年の法改正により、新たな裁判手続きが創設され、従来よりも迅速に犯人特定が可能になりました。
開示請求では、まずSNS運営会社に対してIPアドレスやアカウント作成時の情報開示を求めます。次に、判明したIPアドレスからインターネットプロバイダに対して契約者情報の開示を請求します。
発信者情報開示請求にかかる費用は、内容証明や簡易裁判であれば20万円〜80万円程度、複雑な事案では100万円を超えることもあります。弁護士への依頼が一般的ですが、法テラスなどの支援制度を利用できる場合もあります。
明らかな権利侵害が認められた場合、発信者情報開示が認められる可能性は高いとされていますが、個別の事案により判断は異なります。
刑事告訴の手続き
なりすまし犯罪について刑事告訴を行う場合、最寄りの警察署に告訴状を提出します。告訴状には、被害事実、証拠資料、犯人の特定情報(判明している場合)を詳細に記載します。
サイバー犯罪に詳しい警察官が担当することが多く、デジタル証拠の取り扱いについても適切に対応されます。告訴から起訴までの期間は、事案の複雑さにより3ヶ月から1年程度と幅があります。
民事訴訟による損害賠償請求
犯人が特定できた場合、民事訴訟により損害賠償を請求できます。慰謝料については、なりすましによる精神的苦痛の程度、社会的影響の大きさ、継続期間などが考慮されます。
個人の場合の慰謝料相場は30万円から200万円程度、企業の場合は100万円から1000万円程度が一般的です。ただし、経済的損失が具体的に証明できる場合は、それを上回る賠償額が認められることもあります。
効果的な予防策と対策技術
被害に遭ってから対処するのではなく、未然に防ぐことが理想です。アカウントのセキュリティ強化やプライバシー設定、企業向け監視ツールの活用など、具体的な予防策を紹介します。

アカウントセキュリティの強化
なりすまし被害を防ぐ最も基本的な対策は、アカウントのセキュリティ強化です。2段階認証(2FA)の設定は必須であり、SMS認証よりもアプリ認証や物理キーの使用がより安全です。
パスワードは12文字以上の複雑なものを設定し、他のサービスとは異なる独自のものを使用します。パスワード管理ツールの活用により、複数のアカウントで異なる強固なパスワードを維持できます。
定期的なログイン履歴の確認も重要です。不審なアクセスが確認された場合は、即座にパスワード変更とデバイスからのログアウトを実行します。
プライバシー設定の最適化
SNSのプライバシー設定を適切に行うことで、なりすまし犯が利用できる情報を制限できます。プロフィール写真や個人情報の公開範囲を友人のみに限定し、位置情報の共有は無効にします。
投稿の公開範囲も慎重に設定し、不特定多数に個人情報が漏れないよう注意します。特に、家族の写真や自宅の特定につながる情報の投稿は避けるべきです。
企業向け監視システムの導入
企業の場合は、SNS監視ツールの導入が効果的です。自社名や商標、役員名などをキーワードとして設定し、なりすましアカウントの早期発見を図ります。
AIを活用した監視システムでは、画像解析により自社ロゴや商品画像の無断使用も検出できます。24時間365日の監視により、被害拡大前の迅速な対応が可能になります。
監視コストは月額10万円から50万円程度ですが、なりすまし被害による損失を考慮すると、十分に投資効果が見込めます。
なりすまし被害の心理的影響と回復支援
なりすまし被害は、金銭的な損失だけでなく、精神的なダメージも大きな問題です。被害者の心のケアや相談先についても知っておきましょう。
被害者の心理的ダメージ
なりすまし被害は、被害者に深刻な心理的影響を与えます。自分の名前や顔写真が勝手に使用され、知らない間に悪評が広まることで、強い不安感や恐怖感を感じる被害者が多数います。
特に、SNSを通じて形成された人間関係に亀裂が生じることで、社会的孤立感を感じるケースも報告されています。睡眠障害や抑うつ状態に陥る被害者もおり、適切なサポートが必要です。
専門機関による支援体制
なりすまし被害者向けの相談窓口として、国民生活センターや各都道府県の消費生活センターが利用できます。法的対応については、日本弁護士連合会のサイバー犯罪対策委員会が専門的なアドバイスを提供しています。
心理的サポートについては、SNS被害専門のカウンセリングサービスも登場しており、被害者の心の回復を支援しています。
最新技術動向とこれからの対策
AIやブロックチェーンなど、最新技術を活用したなりすまし対策が急速に進化しています。国内外の法制度の動きとあわせて、今後の展望を見ていきます。
AIを活用した検出技術
2025年現在、AI技術を活用したなりすまし検出システムが実用化されています。機械学習により、アカウントの行動パターンや投稿内容から、なりすましの可能性を自動判定します。
自然言語処理技術により、文章の文体や語彙の特徴から、本人以外による投稿を検出することも可能になっています。これらの技術により、従来は困難だった巧妙ななりすましの発見が期待されています。
ブロックチェーン技術による本人認証
ブロックチェーン技術を活用したデジタルアイデンティティ認証システムの開発も進んでいます。改竄不可能な本人認証情報をブロックチェーン上に記録することで、なりすましを根本的に防ぐことが可能になります。
ブロックチェーン技術を活用した本人認証システムの研究が進められており、一部のプロジェクトでは実証実験が開始されていますが、主要SNSへの本格導入については現時点で正式な発表はありません。
国際的な法整備動向
SNSは国境を越えて利用されるツールである以上、なりすまし問題への対応も各国の法整備が重要になります。ここでは、欧州・米国を中心とした最新の法規制の動向を紹介し、日本への影響も考察します。
欧州のデジタルサービス法
欧州連合では2024年に施行されたデジタルサービス法により、大手SNSプラットフォームに対してなりすまし対策の強化が義務付けられています。迅速な削除対応や透明性報告の提出が求められており、日本への影響も予想されます。
米国の対策動向
米国では州レベルでの規制が進んでおり、カリフォルニア州では2024年からなりすまし被害者への支援制度が開始されています。連邦レベルでの統一的な規制も検討されており、グローバルスタンダードの形成が注目されています。
SNSなりすましに関するよくある質問(Q&A)
Q1. なりすまし被害に遭った場合、警察に相談すべきですか?
はい、特に金銭的被害や脅迫的な投稿がある場合は速やかに警察に相談することをおすすめします。サイバー犯罪相談窓口(#9110)では24時間相談を受け付けており、専門知識を持った担当者が対応します。証拠保全の方法についてもアドバイスを受けられます。
Q2. SNSの偽アカウント削除にはどのくらい時間がかかりますか?
プラットフォームにより異なりますが、Xでは24時間から72時間、Instagramでは3日から1週間程度が一般的です。ただし、明らかな権利侵害がある場合や有名人のなりすましの場合は、より迅速に対応される傾向があります。複雑なケースでは2週間以上かかることもあります。
Q3. なりすましアカウントに投稿された内容で名誉毀損になりますか?
事実に反する内容で社会的評価を低下させる投稿があれば、名誉毀損罪が成立する可能性があります。ただし、単なる悪口や感想レベルでは名誉毀損には該当しない場合もあります。具体的な判断については弁護士に相談することをおすすめします。
Q4. 企業のなりすましアカウントを発見した場合の対処法は?
まず該当企業の公式窓口に通報し、SNSプラットフォームにも報告します。その後、スクリーンショットで証拠を保全し、周囲に偽アカウントの存在を周知します。詐欺的な投資勧誘などがある場合は、消費者庁や警察への通報も検討してください。
Q5. 2段階認証を設定していてもなりすまし被害に遭うことはありますか?
2段階認証はアカウント乗っ取りを防ぐ効果的な手段ですが、本人の写真や情報を使って新たな偽アカウントを作成されるタイプのなりすましは防げません。総合的な対策として、プライバシー設定の見直しや定期的な自分の名前での検索も重要です。
Q6. なりすまし被害の慰謝料はどのくらい請求できますか?
個人の場合は30万円から200万円程度、企業の場合は100万円から1000万円程度が相場です。ただし、被害の規模や継続期間、社会的影響の大きさにより大きく変動します。具体的な経済損失が証明できる場合は、それに応じた賠償額が認められることもあります。
まとめ
SNSなりすまし問題は、デジタル社会における深刻な脅威として年々複雑化しています。個人レベルでの予防策から法的対応まで、多角的なアプローチが必要です。
最も重要なのは、被害を未然に防ぐための予防策の実施です。強固なアカウントセキュリティの維持、適切なプライバシー設定、定期的な監視により、リスクを大幅に軽減できます。
もしなりすまし被害に遭遇した場合は、迅速な証拠保全と専門機関への相談が重要です。放置することで被害が拡大する可能性があるため、早期の対応を心がけましょう。
技術の進歩により新たな対策手法が開発される一方で、犯罪手口も巧妙化しています。最新の情報を常に把握し、適切な対策を継続することが、デジタル時代を安全に生きるために不可欠です。