TikTokで見えたZ世代の本音とファン化への道。味の素社のインスタントウィンキャンペーンで得た成果とは

日本の食卓を支え続ける味の素株式会社。同社が運営する人気レシピサイト「AJINOMOTO PARK」は、1万5千点を超えるレシピや、多彩な食に関する情報が多くの人々に愛されています。そんな同社が、未来の顧客であるZ世代とのつながりを築くために実施したのが、TikTok運用であり、TikTokでのインスタントウィン機能を活用したキャンペーンでした。
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インスタントウィンキャンペーンは、応募後すぐに抽選結果が分かるくじ引き型のキャンペーンです。即時性の高い企画として、ユーザーの応募率が高いというメリットがあります。味の素社はこの特性を、若年層のリアルな声を集めるための方法として採用。そこで得られた結果や今後の展望について、味の素株式会社のコミュニケーションデザイン部の内山翔貴氏に伺いました。
モデレーターは弊社の加藤暁雄(ショートムービーグループ)と黒田夏実(ブランド戦略部)が務めます。
(執筆:サトートモロー 進行:加藤暁雄・黒田夏実 編集:神津洋幸)
なぜ味の素社がTikTok?Z世代との新たな接点構築への挑戦
黒田:
早速ですが、まずは内山さんの現在のお仕事内容と、ご所属のマーケティングデザインセンターについて教えていただけますか?
内山:
私は現在、マーケティングデザインセンターのコミュニケーションデザイン部、カスタマーサクセスグループにおります(取材当時)。
黒田:
カスタマーサクセスグループでは、具体的にどのような業務を担当しているのですか?
内山:
私が所属するグループでは、当社が運営する食に関する情報を提供するウェブサイト「AJINOMOTO PARK」を中心とした、オウンドメディアの運用を担当しています。
「AJINOMOTO PARK」に紐づくSNSアカウントやLINE、ファンコミュニティなどを通じて、生活者の方々に味の素社のファンになっていただく。そして、より深くブランドを理解し、好きになっていただくための活動を日々行っています。
加藤:
「AJINOMOTO PARK」は多くの方に利用されていると思いますが、メインのユーザー層はどのあたりでしょうか?
内山:
40代、50代の女性が中心です。企業が運営するレシピメディアということで、管理栄養士が監修した1万5千点のレシピが掲載されている点に、安心感を持って利用いただいていると考えています。
黒田:
1万5千レシピはすごいですね!「AJINOMOTO PARK」のSNSも、LINEの友だち数やX(旧Twitter)のフォロワー数が非常に多いですが、2023年度にTikTokアカウントを開設された背景には、どのような課題感があったのでしょうか?
内山:
「AJINOMOTO PARK」のメイン層が40代、50代の女性ということもあり、より若い世代、特にZ世代の方々ともっとつながりたいという想いが以前からありました。若い方々に味の素社のことを知ってもらい、商品を手に取っていただき、好きになってもらう。 TikTokはZ世代の利用者が多いプラットフォームなので、彼らとつながるためのツールとして最適だと考えたのです。
加藤:
実際にTikTokを始めてみて、Z世代とのつながりに変化や手応えは感じていますか?
内山:
昨年度(2024年度)にはフォロワー10万人を達成することができましたし、日々の投稿にも多くの反応をいただけるようになってきました。少しずつではありますが、つながりが強まってきているという感覚はあります。
黒田:
実際、どのような動画だとコメントが盛り上がりやすいですか?
内山:
やはりレシピ系の動画は反応が良いですね。広告をかけず20万回再生された動画もあり、「美味しそう」といったコメントが多く寄せられました。
とはいえ、TikTokに限らず全ての媒体を通じて、私たちはレシピを紹介するだけでなくファンになってもらうことを大切にしています。美味しそうという声の先でどのようなつながりを生むかは、現在も取り組んでいる課題の一つです。今回、インスタントウィン機能を活用したキャンペーンで集まった意見も参考にしながら、新しいコンテンツ作りに挑戦していきたいと考えています。
Z世代のリアルな声が集結。キャンペーンで見えた確かな手応え
黒田:
順調にZ世代との接点を増やされている中で、今回、TikTokインスタントウィン機能を活用したキャンペーンを実施した背景には、どのような課題感があったのでしょうか?
内山:
少しずつ若い世代とのつながりを持てるようになってきたと感じる一方、TikTokの運用で課題も感じていました。それは、フォロワーやTikTokユーザーの「定性的な意見」や「深い反応」が得にくいという点です。視聴回数や「いいね」の数だけでは、ユーザーが何に対して「良い」と感じたのか、あるいは何を良くないと感じているのかが把握できずにいました。
定量的なデータからユーザーのインサイトを推測するにも限界があります。そこで、インスタントウィンのキャンペーンをきっかけに、直接的にユーザーの定性的な意見を収集したいと考えたのです。もちろん、キャンペーン実施による認知拡大やフォロワー増加なども目的には入ってきましたが、GMO NIKKOが提供しているTikTokインスタントウィンは、それ以上に「リアルなユーザーの声を聞ける」ところに魅力を感じました。
黒田:
私たちからTikTokインスタントウィンキャンペーンについて提案する際、目的の多くは、「より認知を広げるため」「フォロワー(ファン)を増やすため」「商品のサンプリング」などといった活用事例が中心です。味の素社のように、「ユーザーの声を聞く」という目的にフォーカスしたキャンペーンの実施は、私たちにとっても新鮮な活用方法だと感じました。
内山:
私たちとしても、皆さんとの取り組みは「TikTokでどうすればユーザーのリアルな声を引き出せるか」を検証する良い機会になりました。
黒田:
実際にTikTokインスタントウィンキャンペーンを実施してみて、どのようなユーザーの声が集まりましたか?
https://www.tiktok.com/@ajinomotopark_official/video/7476415492727622929
https://www.tiktok.com/@ajinomotopark_official/video/7476416462932954384
https://www.tiktok.com/@ajinomotopark_official/video/7476417752794795280
内山:
コンテンツの中身に対する意見もあれば、制作面での指摘もありました。「もっとTikTokらしい、テンポの速い編集にした方が良いのでは?」といった表現方法に関する意見や、動画のスピード感についてのコメントは特に印象的でした。中には、ものすごい長文で熱い思いをぶつけてくださるユーザーさんもいて、本当に驚きました。
私たちの間では「N=1」、つまり一人のユーザーの非常に光る意見こそ大事にすべきだという考え方があります。どうしても意見を平均化してしまうと、当たり障りのない、ぼんやりとした内容になりがちです。
今回のキャンペーンでは、そういった画一的な意見に留まらない、個々のユーザーの具体的な思いが詰まった声を得られました。これは、私たちにとって本当に大きな収穫だったと感じています。
黒田:
私たちもコメントを拝見しましたが、最近の物価高騰などリアルなテーマに関連して、「より低コストのレシピを増やしてほしい」といったコメントもありました。X(旧Twitter)でもコメント文化はありますが、TikTokはよりコメントが活性化している印象があります。だからこそ、「節約レシピ」や「物価高」といった、よりラフでリアルな声が届いたのではないでしょうか。
加藤:
私たちも、集まった意見を通じて非常に多くの気づきがありました。特に、動画に対する具体的なフィードバックは、ポジティブにしろネガティブにしろ、ユーザーが実際にどう感じているのかを知る上で大変参考になりました。
内山:
そうですね。今回のキャンペーンでは「率直なご意見をお聞かせください」というスタンスで臨んだ結果、生活者の方々からストレートな本音を聞けたのは本当によかったです。
黒田:
社内からの反応はいかがでしたか?
内山:
今回のキャンペーンを実施するにあたり、目的と実際にどのような意見が集まったのかを共有しました。私たちは普段、生活者の方々と直接つながって声をいただく機会は限られています。だからこそ、キャンペーンで多くの意見が集まったという事実に対して、社内では非常にポジティブな反響がありました。「この貴重な声を、今後のTikTok運用だけでなく、若年層全体のインサイト理解に活かしてほしい」といった声も上がりましたね。
TikTokを起点に、全社的なファン化戦略へ。味の素社が描く「つながるだけで終わらないTikTokの役割」
加藤:
今回の成功を踏まえて、今後の「AJINOMOTO PARK」としてのTikTokアカウントの展望について教えてください。
内山:
TikTokを運用する目的は、若年層の方々とのつながり作りにありますが、ただつながるだけでは不十分だと考えています。味の素社のファンになってもらう上で、TikTokの中だけで完結してしまってはもったいないなと。 TikTokは「若年層とこうすればつながりが作れる」「こうすれば好きになってもらえる」という知見を蓄積していく場所として、今後も運用していきたいです。
黒田:
TikTokで得た知見を、他のマーケティング活動にも活かしていくということですね。味の素社では現在、既存のファンの方々とファンミーティングなども開催しているとお聞きしています。
将来的には、TikTokでつながった若い世代とも、オフラインでの交流イベントなどを開催したいと考えていますか?
内山:
ぜひやっていきたいです。イベントなどのオフラインの場で直接会うことで、よりブランドへの愛着を深めてもらえるのではないかと考えています。
黒田:
どんなイベントになるかとても楽しみですね。
内山:
TikTokの発信ではあまり商品軸にならないことを意識しています。生活者の方々は、料理以外でもさまざまな興味関心があると思います。そういった個々の「好き」をフックにして、それが自然と料理につながり、最終的に私たちの商品に結びついていく。そんな流れを作れたらと考えています。
加藤:
TikTokは特に、プラットフォームの特性上、一方的に「これが良いですよ」と押し付けるような発信はユーザーの共感が得られないと感じています。まずは「こういうものがある」と認知を広げていき、ユーザー自身が「味の素社って良いものだ」と腑に落ちる体験をしないと、ファン化は難しいのかなと。
コンテンツが溢れている中で、いかに目に留めてもらい、自分ごと化してもらうか。そのためには、内山さんがおっしゃるように商品ありきではなく興味を持ってもらうというステップがますます重要になると思います。
ぜひ今後も、皆様のTikTok運用やファン化のお手伝いができれば幸いです。内山さん、本日はありがとうございました!
内山:
ありがとうございました。

- ライター:TRUE MARKETING編集部