事例紹介

「知らなかった」では済まされない。総務省ガイダンスから読み解く、広告主と代理店が取り組むべき健全な広告運用のあり方

2025.07.23Case study
「知らなかった」では済まされない。総務省ガイダンスから読み解く、広告主と代理店が取り組むべき健全な広告運用のあり方

運用型広告の自動化が進む一方で、広告配信のブラックボックス化による「ブランド毀損」や「アドフラウド(広告詐欺)」のリスクは増大しています。この状況に対して、総務省は「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」を2025年に発表しました。

そして、総務省のガイダンスと広告主に対するメッセージに対して、2025年6月26日(木)、GMO NIKKO株式会社は株式会社Spider Labsと共催のセミナー「広告主等向けガイダンスを読み解く 〜デジタル広告の健全な運用に向けて〜」を開催しました

ウェビナーでは、ガイダンスの要点をダイジェストで解説。広告代理店の現場視点から、実務レベルでどのように広告の健全性を管理していくべきかなど、具体的な対策をディスカッションしました。

登壇者紹介

吉田 七海 氏
株式会社Spider Labs 営業部
Spider Labsは、"広告費のムダ"をなくし、健全なデジタル広告市場を支えるアドフラウド対策の日本発リーディングカンパニー。アドフラウド対策以外にも、ブランドセーフティ対策やフェイクリード(不正CV)対策、転売対策などあらゆる不正に対応可能なサービスを提供している。

吉田氏は広告代理店でWebマーケティング支援に従事した後、Spider Labsにジョイン。現在はアドフラウド対策の啓蒙活動を行っている。

花岡 陸
GMO NIKKO株式会社 マーケティングソリューション本部 ソリューションプランニング部 営業戦略グループ
GMO NIKKOはGMOインターネットグループの一員として、デジタルを軸に新たな価値を創造する総合マーケティング支援企業。AIをはじめとする、最先端のテクノロジーを活用したサービスを自社開発。広告主企業のブランディングから顧客のロイヤリティ向上に至るまで、目標の達成に貢献、またメディア企業様の収益最大化を支援している。
透明性と実効性を両立する広告運用支援に定評があり、特に広告主視点でのリスク管理・成果最大化のノウハウを有する。

花岡は2022年にGMO NIKKOに入社。営業職と兼務で、弊社の「武器開発」を行う営業戦略グループにて、顧客折衝やセミナー登壇などを担当。

ガイダンスが示すデジタル広告の2大リスクと広告主の責任

吉田:
日本の総広告費の約半分をデジタル広告が占めるようになった現在、GoogleのP-MAXに代表される「運用型広告」の自動化はますます進んでいます。これにより広告運用にかかる工数が削減される一方、「広告がどこに配信されているのか見えにくい」というブラックボックス化が深刻な課題となっていますこれにより広告運用にかかる工数が削減される一方、「広告がどこに配信されているのか見えにくい」というブラックボックス化が深刻な課題となっています。

意図せず自社の広告が不適切なサイトに掲載されてしまうリスクが高まっている状況を受け、今回初めて総務省が広告主に対し、組織的な対策を促すガイダンスを発表しました。

広告主が向き合うべき2大リスク〜「ブランドセーフティ」と「アドフラウド」

吉田:
本ガイダンスが警鐘を鳴らすリスクは、大きく二つに分けられます。
一つ目は「ブランドセーフティ」です
広告が公序良俗に反するサイトや、違法コンテンツをアップロードしているサイト、企業の評判を損なう可能性のあるサイトに表示され、ブランドイメージが毀損されるリスクがあります。こうしたサイトへの広告掲載は、顧客からの信頼低下を招くだけでなく、反社会的な組織への意図せぬ資金提供につながる可能性も指摘されています。

二つ目は「アドフラウド(不正クリック)」です
ボットなど人間以外の存在によって広告が不正にクリックされ、広告費が搾取されるリスクが大きく問題視されています。アドフラウドにより無駄なコストが発生するだけでなく、不正なクリックデータがノイズとなり、広告効果の正確な分析や正しい意思決定を妨げる要因にもなるのです。

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最終的な責任は広告主にある〜調査からわかる不正クリックの実態

吉田:
今回のガイダンスで特に注目すべきは、これらのリスクに対する最終的な責任は広告主にあると明確に記された点です
。「運用は代理店に任せているから」という姿勢は、もはや通用しません。広告担当者だけでなく、経営層も関与して管理体制を構築していくべき課題として位置づけられています。

こうしたリスクは、決して他人事ではありません。Spider Labsは2025年4月に実施した調査によると、特に対策を行っていない広告アカウントでは、全インプレッションの23%、全クリックの21%が、ブランドセーフティや低パフォーマンスの観点で問題のあるサイトで発生していました。

これは「広告が5回表示されるうち1回は、何らかの不適切なサイトに掲載されている」ことを意味し、決して無視できない数値です。

他にも、アドフラウド率が高いネットワーク媒体については、最大で47%、つまり2回に1回のクリックが不正クリックと判定されました。業界別に見ると、金融通信・不動産・教育などで被害が増えています。

仮に被害の度合いが平均より低いといっても、安心はできません。業界の特性に応じて最適な対策を講じることで、デジタル広告のリスクを最小限に抑えることができるのです。

(例)総務省の「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス(案)」の詳細や、自社が所属する業界の平均アドフラウド率を知りたいなど、詳細は本記事下部の「セミナー資料のご請求はこちら」バナーよりお問い合わせいただけます。

【パネルディスカッション】代理店のリアルな現場から探る、これからの健全な広告運用

ここからは、Spider Labsの吉田氏とGMO NIKKOの花岡氏の二人が、広告代理店の現場視点から実践的な広告運用のポイントについて、ディスカッションを行いました。

テーマ①代理店視点の現場感。普段の配信面のチェックはどうしてる?

吉田:
最初のディスカッションテーマは「代理店様視点の現場感(現状どのように運⽤し、管理しているのか)」です。GMO NIKKOでは普段、どのように広告運用のリスク管理を行っていますか?

花岡:
大きく分けると、「定期的な配信面のチェック」と「手動での配信面除外」という2つの軸で対応しています

まず配信面のチェックですが、お客様の予算感や出稿媒体によって調整しつつ、基本的に全案件で定期的に行っています。特にアドネットワークなど、リスクが高い媒体の配信割合が多いお客様の場合、デイリー、場合によっては午前・午後でチェックすることもあります。

吉田:
かなり細かくチェックされているのですね。手動での除外というのは、具体的にどのような運用でしょうか?

花岡:
いわゆるホワイトリスト運用とブラックリスト運用です。ブランドイメージを特に重視されるお客様であれば、「この面にしか出さないでほしい」というホワイトリストをいただき、その面に限定して広告を出稿します。逆に「ここの面には絶対に出したくない」というご要望があれば、事前にブラックリストとして登録し、配信から除外します。

運用開始後も、プレースメントレポートを確認して「この配信面はどうしますか?」と常にお客様とコミュニケーションを取りながら、ブラックリストを追加していきます。

吉田:
お客様ごとにブランド毀損のリスクに対する考え方はさまざまなので、そうした個別対応は不可欠ですよね。ただ、複数の企業様を担当する中で、こうしたチェックや手動での除外作業は、かなりの工数になってしまうのではないでしょうか?

花岡:
そうですね。リスティング広告のクエリ除外のように、一つひとつは大きな作業ではなくても、相応の工数がかかっているのが実情です。アドフラウドリスクの高い配信面を最初から自動除外できれば、その分の工数をより戦略的な業務に充てられるので、その仕組み構築は社内でも検討中です。

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テーマ②不正が蔓延する今、広告運用で気をつけるべき三つのポイント

吉田:
二つ目のテーマは、「不正が蔓延する今、広告運⽤で気をつけているポイントは?」です。不正クリックや不適切な配信面が蔓延する中で、広告運用担当者が特に気をつけるべき「危険信号」のようなものはありますか?

花岡:
主に3点あると考えています。「CPCが安すぎないか」「検索パートナー面の扱い」「お客様に合わせた配信管理」です。
一つ目の「CPCが安すぎないか」は、CPC(クリック単価)が異常に安価な場合を指します。 CTR(クリック率)が不自然に高いとCPCは下がりますが、それがCV(コンバージョン)につながっていない場合、ボットによる不正クリックの可能性を疑います

単純にパフォーマンスの良い配信面である可能性もあるので、定性的に判断する必要はありますが、まずは一度立ち止まって分析してみるべきサインです。

二つ目の「検索パートナー面の扱い」ですが、以前このような事例がありました。検索広告のみに出稿して配信量が頭打ちになったお客様がいて、配信拡大のために検索パートナー面への出稿を検討していました。その時、Spider Labsさんの無料診断を活用して、検索パートナー面を増やした場合のアドフラウド発生率の変化を検証しました。

すると、検索パートナー面を増やすとアドフラウドの発生率が顕著に増加することがわかったのです。不正クリックによって失われる広告費を考慮すると、ツールを導入して安全を担保した上で、配信面を拡大した方が費用対効果は高いという結論に至りました。

三つ目の「お客様に合わせた配信管理」ですが、お客様のリスク許容度に合わせて運用方針を変えることが重要だと考えています

お客様は安全に広告を配信したいのか。それとも、機会損失を防ぐためある程度のリスクは許容してでも広く配信したいのか。安全性を重視するなら、最初は配信面をかなり限定してから徐々に拡大していくのがよいでしょう。逆に機会損失を避けたいなら、最初は広く配信して後から問題のある面を除外していくというアプローチを取ります。どちらの方針を選択するのか、最初にすり合わせておくことが非常に重要です。

テーマ③:広告主と一緒に取り組みたい、これからのリスク管理

吉田:
最後のテーマは、「代理店の⽴場から、今回の指針を踏まえて広告主様に⼀緒に管理してほしいポイントは?」です。GMO NIKKOとして、広告主の皆様に「ここは連携して管理していきたい」と感じるポイントはありますか?

花岡:
大きく二つあります。一つ目は、「どういう状況をブランド毀損とするのか」という定義付けを一緒に行うことです。広告配信を支援する際、弊社から「こういった配信面は避けた方がいいのでは」とご提案します。しかし、企業の詳細なブランド規定やどこまでの表現なら許容できるかといった線引きは、やはり広告主様にしか判断できない部分が大きい。

この「自社にとってのNG」の基準を一緒に考えていただけると、我々もより精度の高い運用ができますし、ブランド毀損のリスクをぐっと下げられると考えています。

吉田:
「どこまでをリスクと捉えるか」は企業によって全く違いますからね。もう一つのポイントは何でしょうか?

花岡:
二つ目は、アドフラウドが発生した背景を、広告主・代理店・ベンダーの三者でしっかり理解することです

ひとくちに「不正クリック」と言っても、それが機械的なボットによるものなのか、あるいは競合他社による人為的な嫌がらせなのかによって、打つべき対策は全く変わります。例えば競合からの人為的なクリックであれば、紳士協定を結びに行くといったビジネス的な判断も必要になるかもしれません。

不正が起きた背景を三者で共有し、ケースバイケースで最適な対策を一緒に考えていく。そうした連携ができると、より本質的な問題解決につながるはずです。

吉田:
ありがとうございます。発生した事象を報告するだけでなく、その原因や背景まで含めて透明性の高いデータを共有し、三者で理解を深める。それがこれからの健全な広告運用に不可欠だということですね。

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アドフラウドによる二つの失敗例を理解し対策する

吉田:
三つのトピックについて花岡さんに話を伺いました。最後に当社から、「アドフラウドによる失敗例」について、ブランドセーフティー観点と不正クリック観点でお話したいと思います。

まずブランドセーフティー観点について、不適切なサイトへの広告出稿をどうすればいいかというお問い合わせを多くいただきます。広告の配信面がブラックボックス化した結果、よからぬ形で消費者に広告が届き、それがブランド毀損になるという事例です。

一方で、配信面を限定しすぎることもよくないというお話もあります。主に機会損失や広告指標の悪化につながるケースで、リスク回避をしつつもどう広告パフォーマンスを高めるかという、二つの視点が非常に重要です。

不正クリック観点では、CTRは異常に高いのにCVにつながらないケースなどが該当します。これはリターゲティング(広告)を強化しているお客様に多く、広告ボットにリタゲした結果、不正クリック率が非常に高くなってしまうというケースが挙げられます。

近年は機械学習が進み、資料請求や問い合わせフォームのクリックなど、不正なコンバージョンまで誘発しているケースも発見されました。こうした事態が蔓延すると、広告のインプレッションや最適化に悪影響が及んでしまいます。

いずれかのケースに該当している場合、ぜひ私たちにご相談ください。

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TRUE MARKETING編集部
ライター:TRUE MARKETING編集部
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