マーケティングコラム

【アド論アーカイブ】オトナTSUTAYAと恵文社一乗寺店  ~あなたがその本屋さんに行く理由~

2020.11.24Column
【アド論アーカイブ】オトナTSUTAYAと恵文社一乗寺店  ~あなたがその本屋さんに行く理由~

【アド論アーカイブ】オトナTSUTAYAと恵文社一乗寺店  ~あなたがその本屋さんに行く理由~

「オトナのTSUTAYA」をコンセプトに、昨年12月初めにオープンした代官山蔦屋書店。
私が訪れたのはオープン間もない週末ということもあってか多くの人で賑わっていました。

お店は2階建3棟という構成。その広いスペースを使って、本、映像、音楽、文具、旅行と5つのカテゴリーで商品・サービスを提供しています。

アート、クルマ、料理など、ジャンルごとに深く掘り下げてセレクトされた雑誌、まるでその当時にタイムスリップしたかのように充実している80年代和洋ロック・ポップスCDなど店内を巡るだけでいろいろな楽しみが向こうから攻めてきて、気をつけないと何時間も長居してしまう、そんな空間になっています。

ところ変わって京都。
左京区一乗寺にある「恵文社一乗寺店」も、一度入ったら楽しくてなかなか出てくることができない、と話題の書店です。

京都の市街地や定番の観光コーズからは少し外れた場所にそのお店はあるのですが、「ここを訪れるためだけに新幹線に乗って京都に来た」というお客さんも少なくありません。
店内は、暮らし、旅、食、サブカルなど、書店のこだわりが感じられる書籍が所狭しと並んでおり、訪れた人の知的好奇心を刺激します。

また、「本にまつわるあれこれのセレクトショップ」というキャッチフレーズどおり、書籍だけでなく雑貨や文房具、CD・DVDなど「それによって読書の楽しみが増したり、本のある生活が豊かになるようなアイテム(恵文社HPより引用)」も数多く並んでいます。

キーワードは「提案」と「発見」

もしもあなたが、すでに欲しい本のタイトルが決まっていたり、巷で話題の小説を買うのが目的なら、正直な話、どちらの書店もあまりお勧めすることはできません。
本の見つけにくさにおいてはどちらの書店も日本で1、2を争うレベルといっても過言ではないでしょう。

それではなぜ、人はこれらの書店に行きたいと思うのでしょうか?
その秘密は「提案」と「発見」、この2つのキーワードに隠されています。

今回紹介した2つの書店は、こだわりのライフスタイルや新しい知識・文化との出会いを、棚に並べた書籍を通じて、訪れたお客さんに強烈に提案しています。
また、本棚に囲まれた迷路のような空間を巡り陳列された本の表紙を眺めるだけで、まるでミュージアムのような知的欲求を刺激するたくさんの出会いにぶつかります。

ここに行けばなにかワクワクすることを「提案」してくれる、また、なにか新しい「発見」ができるかもしれない、そんな思わぬ出会いへの期待感が「この書店に行きたい!」と思わせる秘密なのです。

実はWebコミュニケーションの世界でも、この「提案」と「発見」は最近注目を浴びはじめています。

現在のWebコミュニケーションの主流はGoogle、Yahoo!に代表される「検索」であることは間違いありません。
ただし、「検索」はあくまでも目的の情報に出会うための手段であり、思わぬ出会いを「提案」したり、新たな欲求を「発見」させたりすることは得意ではありません。

では、いかにしてこの「提案」「発見」の領域にコミュニケーションの幅を広げていけばよいのか。
この部分を次回のコラムで深く掘り下げていきたいと思います。

ところで、良い本屋さんに入ると必ず便意を催すのはなぜなんでしょうかね?

※アド論掲載日 2012年1月11日

神津 洋幸(こうづ ひろゆき)
ライター:神津 洋幸(こうづ ひろゆき)
ストラテジックプランナー、リサーチャー。Webプロモーションの戦略立案、Web広告効果の分析・オプティマイズ、各種リサーチなどを担当。前職はマーケティングリサーチ会社にて主に広告効果の調査・分析・研究業務に従事。2004年より現職。
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