【後編】あらゆる分野のビッグネームを日本一輩出する女子校に。普通の枠を超える渋谷女子インターナショナルスクールの教育方針

「私はシブジョを日本一の女子校にしたいんです」
2023年4月に開校した渋谷女子インターナショナルスクール(以下、シブジョ)。校長である赤荻瞳さんは、ギャルサー出身で21歳にして『egg』編集長を務めるという、異色の経歴を持ちます。
同校ではSNSや動画制作、英会話など通常の学校では学べないスキルを習得できるという特色があります。彼女がこのユニークな学校を立ち上げた背景には、既存の枠に収まらなかった自身の経験と、未来の若者たちへの熱い想いがありました。
前後編でお届けする今回の対談、後編も引き続きGMO NIKKOのZ世代トレンドラボ客員研究員である山口満里奈が赤荻さんをインタビュー。赤荻さんのキャリアと、シブジョを通じて生徒たちへ伝えたい「ギャルマインド」について伺いました。
「渋谷で一番イケてるJK」を目指したギャル時代から『egg』編集長へ
山口:
赤荻校長のご経歴を拝見したんですが、とても波乱万丈というか、一般的な道のりではないなと驚きました。
赤荻:
そう言われると、たしかに一般的ではないかもしれないです(笑)。
私は埼玉県で生まれ育ち、物心ついた時からギャルに憧れがあって、将来は渋谷でギャルになって生きていくって決めていました。高校は校則がきつかったりとか勉強についていけなかったりで、途中から「中途半端な学校生活を贈るくらいなら渋谷へ行こう!」と思うようになって。
高校2年生になってすぐ渋谷へ通い始めるようになって、そこでギャルサークル(ギャルサー)に入りました。
年に2回、お客様が2,000〜3,000人集まって、有名なモデルさんたちが参加するようなイベントを現役高校生が中心になって企画・運営していました。渋谷は日本のど真ん中だと思ってたんで、ここで一番頑張れば日本一イケてるJKになれると思って、一生懸命頑張ってました。
山口:
すごい規模……!ギャルサー時代の経験や人脈が、今の赤荻さんにつながっている部分は大きいですか?
赤荻:
めちゃくちゃ大きいです!19歳の時に広告代理店へ入社したのも、ギャルサーにいた先輩の伝手からでした。その後、休刊状態だった『egg』を復活させたい!という動きが社内であり、その時eggの権利を持っていた会社から「あなたたちになら任せられる」とうちの会社に任していただきました。そこで私が立候補して、4年間編集長を務めることになりました。
私にとって、『egg』は小学生の頃から高校2年生で休刊するまで、教科書より読み込んでいた雑誌でした。最初はYouTubeやSNSでの活動のみでしたが、やっぱり以前のように全国の書店やコンビニで販売されている姿が見たい。そんな想いから、ずっと雑誌としてのeggの復活を目標に活動していました。雑誌を作るという場面でも、元々ギャルサーで活動していた先輩方にたくさん協力してもらいました。
若い子たちのやりたいことを自由に表現できる場所として生まれたシブジョ
山口:
さまざまな場面で、ギャルサーでの経験が活きているのですね。そこからまさか、学校の校長先生になるとは思っていなかったのではないですか?
赤荻:
はい(笑)。でも、頭の中ではうっすら「どうせ働くなら渋谷で歴史に残るコンテンツを作りたい」と思っていました。
『egg』の編集長を引退すると決めて、「何か大きなことをしたい」と考えていました。その時、渋谷で女子校をやるのはどうか?というアイディアが出たんです。
私がギャルサーで多くのチャンスを手に入れたように、若い子たちを応援できる場所を作りたい。そう考えていた私にとって、この構想はぴったりだと思い、校長に立候補しました。
山口:
そうだったのですね。「学校を作るというのはとてもチャレンジングなことだと思います。苦労したこともたくさんあったのではないですか?
赤荻:
いろいろあったんですが、それもギャルサーの伝手で解決できちゃいまして(笑)。ギャルサーのつながりから、同じような通信制サポート校を立ち上げたことある方と出会えて、学校の作り方を一から教えてもらいました。おかげで、学校を作るっていう作業的には全然ハードルはなかったんです。
山口:
またしてもギャルサー人脈が!
赤荻:
それ以外に自分でやったことと言えば、原付きで日本一周したことかな 。全国の学生の事情を知りたいというのと、うちの学校に興味がある子たちに話を聞こうと思い、3ヶ月かけて47都道府県を全部回ったんです。
Instagramのストーリーで「今日は福島駅に何時に行きます」と発信しておいて、会いに来てくれた子とかに話を聞いたり、シブジョが気になる子の相談に乗ったりしました。
山口:
すごい行動力!!
赤荻:
学校を運営する以上、日本一の学校を目指したかったので、47都道府県に行ったことない県があるのはちょっとダサいかなと思ったんです。開校半年前に思いついたのと、免許の期限が切れていたので、慌てて免許を取り直して急いで全国をめぐりました(笑)。
学ぶことは時代と生徒のニーズで変わる。異色の教育スタイル
山口:
シブジョは正確には通信制のサポート校という位置づけなのですよね?
赤荻:
そうです。提携している通信制高校のカリキュラムを使って高卒資格を取得するという形になります。一般の高校であれば月曜日から金曜日までかけて勉強するところ、シブジョはぎゅっと凝縮したカリキュラムを組んでいます。
その分、空いた時間をSNSや英会話、動画編集などの勉強にあてることで、自分の夢や目標を実現するための実践的な知識を学んでいきます。
山口:
具体的にはどのような授業があるのでしょうか?
赤荻:
メインのカリキュラムは、英会話、動画、SNSです。この三つを押さえれば、将来の選択肢が一気に広がると考えています。世界で活躍できるクリエイターとかになれるし、どの分野に行っても英会話は役に立つ。それ以外に、メイクやファッション、トレーニング、接遇、韓国語の授業なども取り入れています。
山口:
接遇というのは?
赤荻:
CA経験がある方や、国際おもてなし協会の方を講師に招いて、名刺の渡し方などビジネスの基本的なマナーについて学びます。今後、シブジョを卒業してすぐ社会人になる子が出てくると思いますが、学生時代にマナーやメイクについて教えてもらう機会はほとんどありません。その点も含め、在学中に準備できる環境を用意したいと考えています。
山口:
たしかに、社会に出る前の実践的な学びは重要ですね。さまざまな分野の中で特にSNS、動画、英会話に力を入れているのは、やはり個人の発信力を重視しているからですか?
赤荻:
はい。それに、シブジョには積極的に表舞台で活躍したいという子もいれば、裏方として頑張りたいという子もいます。 SNSの授業は自分をよく見せるだけでなく、自分が扱う商品・サービスをより良く発信するという、マーケティングの観点を学ぶ場にもしています 。
実際に、ある企業様のPR案件に取り組むという特別授業を行うこともあります。それ以外にも、1年生の夏には「東京ガールズコレクション(TGC)」のティーンイベント、「TGC teen」にインターンとして関わるカリキュラムもあります。ここでは実際に運営スタッフとして、インカムを付けて大人と一緒に出演タレントさんたちをアテンドしたりするんです。
山口:
とても貴重な経験ができるのですね。
赤荻:
あとは、毎学期どの授業が楽しかったか、新しくどんなことやってみたいかをアンケートして、その声に応じてカリキュラムを組み替えています。韓国語の授業を取り入れたのも、一期生の中に「韓国へ留学したい」という生徒が2人いたことがきっかけです。自由にカリキュラムを変えることができるのは、シブジョの強みだと思います。
現在は主要なSNSとしてTikTokを学ぶカリキュラムがありますが、他のアプリの人気が出てきたらそれを学ぶ授業に変更します。
山口:
生徒さんのニーズや時代に合わせて、柔軟に授業を変更できるのですね。
「個性と自由の象徴」ギャルマインドを育み日本一の女子校へ
山口:
生徒の心伽(こと)さんと澪(みお)さんにインタビューした時、「普通の高校じゃできないことをやりたい」という気持ちからシブジョを選んだという話が印象的でした。シブジョを運営する上で、大切にしていることはありますか?
赤荻:
ギャルマインドを育てたいなって思っています。私は高校時代、厳しい校則ややりたいことができない環境がイヤで高校を中退したという過去があります。シブジョに入る子たちには、そんな想いをしてほしくないなって。
ギャルには「やりたいことを自由に表現する」という掟があります。私にとって、ギャルは「個性と自由の象徴」なんです。シブジョではこのギャルマインドを伝えて、未来につながる経験をいっぱい重ねてほしい。シブジョはそれが実現できる場所にしたいと思っています。
山口:
今後、シブジョをどんな学校にしていきたいですか?
赤荻:
日本一の女子校にしたいです。クリエイターであれモデルであれ、あらゆる分野でビッグネームになる女の子たちを一番輩出する学校。そうなればきっと、日本一イケてる女子校と日本一イケてる校長になれると思っています(笑)。
自分のやりたい分野を極めたい子には、とことん応援し尽くそうと思っています。校長としては、在学中に生徒一人ひとりに社会で活躍できる肩書を持てるようにしたいと思っています。
ただ、シブジョを存分に楽しめればOKという子たちもいるので、未来ばかりを意識して強要はしたくないなと。シブジョをめいっぱい楽しんで、卒業したら自分のやりたい道に進み、そこの分野で活躍する。そうなったら最高ですね。それを実現するために、一生懸命サポートしていこうと思っています。
そうやって、シブジョを巣立った子たちがいろんな分野で活躍して、また先生としてシブジョに戻ってくる。そんな未来にも憧れています。
山口:
とても素敵な未来図ですね。
赤荻:
学校の規模としては、生徒の名前を全員把握できるくらいを維持していきたいですが、高校以外の形も模索していきたいです。海外校を作ったり、大学部を作ったり、どんどんチャレンジできる環境を増やしていきたいなと。
個人的には世界一周をしたいので、その過程で留学生を集めたり、次の校舎探しをしたいですね(笑)。
渋谷女子インターナショナルスクール
Website : https://shibujyo.com/
Instagram:https://www.instagram.com/shibujyo_0428
赤荻瞳さんの著書紹介
『平凡な会社員がギャルと出会って人生変わった話。 なりたい自分に近づく6ステップ』
本書は、元『egg』編集長であり現役校長でもある赤荻瞳さんの「1,000人以上の若者の夢を支援してきた」という実体験をもとに描いた、全く新しい”ビジネス×自己啓発×ギャル×小説”。
仕事や転職、キャリアプランに悩むビジネスパーソンや、将来にモヤモヤしている学生さんにぴったりの一冊です。読みやすいストーリーに加え、物語の随所には、著者が編み出した「なりたい自分に近づくための6ステップ」に加え、読者実践型のワークシートもついているので、「本は苦手」という人でも楽しみながら自分と向き合うことができます。

- ライター:山口満里奈
- Z世代トレンドラボ客員研究員
ミス亜細亜大2024GP/東京ドームビール売り子
特技はビールを売ること、書道、野球、バドミントン、チアダンス。生ハムをこよなく愛する。
Instagram:marina_yama0122/X:@marina_yama0122