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「人の役に立ちたい」を貫く。GMO NIKKO五十嵐慧 #サプライジングパーソン

2022.12.15Premium Contents
「人の役に立ちたい」を貫く。GMO NIKKO五十嵐慧  #サプライジングパーソン

ソーシャルギフトサービス「GIFTFUL」を運営する株式会社GiftXいいたかゆうたさんが、マーケターと対談しつつその知見を学び、変化の時代を生き抜くビジネスの本質に迫る連載「サプライジングパーソン」。

今回のゲストは、「TRUE MARKETING」のライターとしてもおなじみ、弊社 広告事業本部の五十嵐慧です。「取材される側」というまさかの立場逆転の状態で、GMO NIKKOを選んだ理由、組織づくりの重要性、オウンドメディア運営など幅広い話題で対談しました。

(執筆:サトートモロー 進行・編集:いいたかゆうた 撮影:小林一真)

「誰と働きたいか」という選択は間違っていなかった

いいたか:
五十嵐さんが、GMO NIKKOに入社した経緯を教えてください。

五十嵐:
僕は2007年にGMO NIKKOに入社しました。就職活動時は、自分が社会に出て働くイメージを全くもっていなかったので、「自分の好きなもの」を基準に業界や企業を選んでいました。

その時の選択肢は、アパレルとインテリアで、広告の「こ」の字も頭にありませんでした。就職活動自体は順調で、内定もいくつかいただきましたが、選考が進めば進むほど、むしろアパレル、インテリア業界で働くイメージを描けなくなってしまったんです。

他の業界も見た方がいいだろうかと思った時、就職ポータルサイト「リクナビ」で、「インターネット広告業界」の特集記事を目にしました。

大手企業を目指す友人が多い中、就職活動で初めて知った「インターネット広告業界」「ベンチャー」という言葉が、魅力的に感じるようになりました。

特集記事を読みながら、直近で開催されている会社説明会に行きました。それが、GMOインターネットグループの子会社となる前の「株式会社日広」です。

説明会では、創業者の加藤順彦と、当時取締役専務だった橋口誠が登壇していたのですが、とても楽しそうに語っていたのを今でも覚えています。インターネットという新しい世界で、これだけ楽しそうに仕事の話をする人と、一緒に働きたいと感じたんです。

いいたか:
「好きなこと」から「好きな人」へ、就職活動の軸が移っていったんですね。

五十嵐:
他の企業の説明会にも参加しましたが、結局「誰と働きたいか」という願望が優先されて、日広1本に選考先を絞りました。

いいたか:
入社してからは、どんな仕事を担当してきたんですか?

五十嵐:
当時は研修制度も未整備だったので、先輩について仕事の手伝いをしていました。広告の撮影があると、コスト削減のために自分たちで自動車を運転して、撮影所まで小物や服を運んでいました。1年目は、都内を車で走り回っていましたね。

それ以外にも、1時間に1回、クライアントさんに関連キーワードのSEO順位をお知らせしたり、月10〜20万円規模のリスティング広告の営業も担当したりしました。葬儀屋から不動産会社まで、どんな業種も担当していましたね。

2年目以降は、徐々にコンペにも出るようになりました。広告運用支援から、ブランディング、キャンペーンといったクリエイティブの仕事が増えていきました。

いいたか:
これまで、五十嵐さんはたくさんの案件に取り組んできたと思います。その中で、記憶に残っているプロジェクトはありますか?

五十嵐:
思い出せるものだと、ふたつ思い当たります。ひとつは決していい話ではないのですが…。

ある大手企業様の、Webサイトリニューアルの案件を勝ち取りました。当時はスマートフォンが登場し始めた頃だったので、ガラケー用サイトとスマートフォン用サイト、パソコン用サイトの3サイトを制作・リニューアルするという大がかりなプロジェクトでした。

数億円規模の案件で、GMO NIKKOがクリエイティブな部分を、外部の協力会社さんがシステム部分を担当することになったんです。しかし…。納期の1ヶ月前に、協力会社の担当者さんが失踪してしまいました。フタを空けてみたら、進捗も20%程度しか進んでいなかったんです。

いいたか:
ゾッとする話ですね…。

五十嵐:
お客様にとっても大きなプロジェクトだったので、「〇月〇日にサイトがオープンします!」と大々的にサイトリニューアルを告知していらっしゃいました。

僕ひとりが謝罪するだけなら、何も問題ありませんでした。むしろ、損害賠償請求の問題に発展したら、会社が傾くかもしれないという方が怖かったです。会社のメンバーが露頭に迷うかもしれないと感じ、すごく怯えていました。

結果的にですが、この問題では上司や法務の方をはじめ、関係各所のメンバーが助けてくれました。お客様も、プロジェクトを完遂するために手を貸してくださって。納期から半年遅れではあるものの、なんとかサイトも完成しました。

恥ずかしい話ですが、当時の僕は「営業が一番偉い」と思っていました。「僕たちが仕事を取ってこなきゃ、他のメンバーは飯が食えない」って。この案件でそれが、いかに傲慢な考えかを思い知りました。

同時に、「チームで仕事をするってこういうことなんだな」と痛感しました。僕は就活生の時、「この人たちと仕事をしたい」という思いでGMO NIKKOに入社しました。

「誰と働きたいか」で働く場所を選んだのは、間違っていなかったんだなと今も思います。この会社に入ってよかったと、改めて強く感じた出来事です。

いいたか:
すごくいい話ですね。もうひとつのプロジェクトはどのようなものでしょうか?

五十嵐:
もうひとつは、月10万円規模の広告運用代行をしていたお客様です。この金額は、当時の僕たちにとっても大きな規模ではありません。ですが、担当者さんの「この商品をなんとか世の中に広めたい」という熱意に押されて、サービス提供以上のご支援をしていました。

その後、担当者さんは転職して、半年後に大手企業のマーケティングチームに配属されました。そして、「また一緒に仕事をしたい」と僕に声をかけてくださったんです。「この人のために何かしてあげたい」という想いや行動が、結果として自分にも返ってくるんだと実感した出来事でした。

僕は今、マネジメントという立場にあります。そのため、どうしても売上や利益を意識して発言しないといけません。しかし、そんな建前の裏には、「この人のためにいい仕事をしたい!と思うのなら、いくらでも時間をかけていい」という本音があります。

このバランスを取るのが、とても難しいですね(笑)。

いいたか:
いくらお客様のことが好きでも、立場がある以上、どうしても業績を意識しないといけないですからね。

ふたつ目のエピソードを聞いて、お世話になっている方の言葉を思い出しました。彼はよく、私に「お客様が出世することを考え向き合いなさい」と言っていました。お客様が出世するということは、それは少なからず貢献できていることがあるからって。

五十嵐:
「お客様を出世させる」というのは、素晴らしい発想ですね。

いいたか:
お客様が潤って出世するには、こちらがいい仕事を提供しないといけないですから。今でも、理にかなった言葉だと感じます。

…ただ、この話にはちょっとしたオチが付いてくるんです。

私が担当したお客様で、マネージャーから、部長、本部長、取締役と、トントン拍子で出世した方がいました。しかし彼の出世後、私の担当した案件は打ち切られてしまったんです。

関わっていた案件のレポートラインは彼でなくなってしまい、権限がなくなってしまったんですよね。こんなケースがあるとは思ってもみませんでした。その方とは今でも定期的に会いますが、会うたびに「あの時は申し訳なかった」と言われています(笑)。

五十嵐:
まさかのオチですね(笑)。

ブラック体質からの脱却

いいたか:
現在はマネジメントを担当しているということでしたが、具体的にはどんな仕事をしているんですか?

五十嵐:
GMO NIKKOには営業部門が三つありますが、そのうちひとつをマネジメントしています。2022年からは、メディア部門も兼務していますね。それと、2015年頃からは新卒・中途の営業職採用にも、携わるようになりました。

いいたか:
五十嵐さんは、各部門でどれくらいのメンバーを見ているんでしょうか?

五十嵐:
営業部門は13名で、メディアチームは7名ですね。メンバーが多い分、ひとりあたりの接点が少なくなるので、コミュニケーションのとり方はかなり意識しています。

いいたか:
確かに範囲が広いですね。具体的に、コミュニケーションで意識してることは何ですか?

五十嵐:
1on1で聞いた話をメモして、必ず覚えておくようにしています。前と同じことを質問して、相手に「僕に興味がない」と思われてはいけないですから。

あと、声をかけられた時は必ず手を止めて、相手の方を向くようにしています。自分の新卒時代、仕事をしたままこちらを向いてくれない先輩がいて、イヤだなと感じることがありましたので。

僕はちゃんとメンバーと向き合うようにして、「なにかあったら相談してね」という言葉だけでなく、話しかけやすい雰囲気を作れるようにしています。

いいたか:
私も、仕事の手を止めずにメンバーの話を聞いてしまっていた時がありましたので、わかります。

五十嵐:
今の上司や代表取締役社長の佐久間は、声をかけにくい雰囲気を絶対作らない人間なんです。彼らを見ていて、話しかけやすいというのは自分にも得だと思うようになりました。

相手に話しかけづらいと思われた瞬間に、こっちもインプットのチャンスを失ってしまいますから。

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いいたか:
コミュニケーションしやすい環境づくりというのは、とても大切ですよね。

それにしても…。私の勝手な偏見で恐縮ですが、GMO NIKKOさんは「ゴリゴリの突撃部隊」という印象があったので、ちょっと意外でした。

五十嵐:
(笑)。確かに僕が採用に関わる以前は、いいたかさんのイメージ通り、悪い意味で体育会系の会社でした。

「やれるところまで突っ走れ。仕事は先輩の背中を見て覚えろ。」

そういう教えを地で行く会社でした。僕もそんなゴリゴリな人間のひとりとして、メンバーとコミュニケーションしていたんです。

当然、会社のやり方に耐えられなくなったメンバーは辞めていきます。当時の僕は、過酷な環境を生き抜いてきた自負があったので、「ついてこれなかった人が悪い」とすら考えていました。

ですが、その考えは結局、自分にも返ってきたんです。組織拡大の計画に対して、人員確保が徐々に追いつかなくなっていきました。

人材が増えないので、マネージャーなど次のキャリアステップを踏むこともできない。今の仕事を、引き継いでくれる人もいない。このままではいけないと思い、マネジメントを正しく学び始めました。

会社も人材が組織に定着できるよう、文化を変えていこうという考えへシフトしていきました。

「これ以上の環境はないと思っています」

いいたか:
その危機感が、社風を変えるきっかけになったんですね。

五十嵐さんは、2007年に入社以来約15年間、GMO NIKKOで働いているじゃないですか。私は今年独立しましたが、それまでに6社経験しています。これまでに、転職を考えることはなかったんでしょうか?

五十嵐:
ありませんでした。僕は飽き性なんですが、GMO NIKKOでは新しいことに挑戦する機会が多く、飽きる暇がなかったです。

弊社はリスティング広告の割合が大きいですが、動画やソーシャルメディアなど、お客様のニーズや社会の変化にも対応してきました。その柔軟性にも、居心地のよさを感じています。

それと、「採用に関わらせてもらったこと」も、転職を考えなかった大きな要因だと思います。

実際、今いる営業マンのほとんどが、僕が「この人と一緒に働きたい」と思って選考を通したメンバーなんですよ。

これって、すごく幸せなことだと思うんですよね。僕は「この人と働きたい」と思い、GMO NIKKOを選びました。そして今、「この人と働きたいな」と思える人材を、選考できる立場にいます。

これ以上の環境は、他では手に入らないかもしれないという思いがあるんですよね。

いいたか:
それはいい環境ですね。GMO NIKKOさんは絶妙なタイミングで、五十嵐さんにとって素敵な環境を用意してくれたんですね。

…五十嵐さんって、何かスポーツをやっていましたか?

五十嵐:
唐突ですね(笑)学生時代はサッカーをやっていました。

いいたか:
やっぱり。私もサッカーをしていたんですが、ここまでのお話を聞いて、すごく団体競技的な考えをお持ちの人だなと思ったんです。「みんなでひとつのチーム」という思想を、とても大切にしていると感じました。

マーケターに役立つ情報を、ブレずに発信し続けたい

いいたか:
ここからは、「TRUE MARKETING」を立ち上げた背景を伺えればと思います。

五十嵐:
オウンドメディア自体は、2020年から運用していました。我々の運用事例を中心に展開しつつ、お客様の背中を押していきたいと考えたんです。しかし、実際にアクセス分析したら、そのほとんどが競合の広告代理店でした。競合の新人にとって、有益な教材になっていたわけです。

それ自体は悪いことではありません。ただ、より多くのお客様と接点を持つためには、今のコンテンツ内容や発信方法を変えていく必要があると感じました。

そこで、マーケティングという切り口で、広告主様のマーケターが共感してくれたり、何かに気づいたりしてもらえるコンテンツを発信しようと決めたんです。結果的に、それがお客様と出会う接点になればいい。

そんな想いで、会社として新たな取り組みとして再スタートしたのが、「TRUE MARKETING」でした。それ以降、よりトレンドを意識しつつ、コンテンツを発信しています。

いいたか:
なるほど。「TRUE MARKETING」は、何名で運用していますか?

五十嵐:
10名です。とはいえ、メディアにかけられるリソースは、全体の1、2割くらいだと思います。

オウンドメディアは、間接プロフィットという観点で将来的なブランディングに寄与するので、できれば専任を置きたいという気持ちがあります。一方で直接プロフィットを生まないという点で、人員の確保がすごく難しいですね…。

そこで止まっては意味がないので、今は「兼務」という形を取って、優秀なメンバーを集めています。

いいたか:
オウンドメディア運営におけるリソースの確保は、多くの企業の課題ですね。
実際にメディアを運営してきた中で、どんな感想をお持ちですか?

五十嵐:
コンテンツを発信し続けるって、すごくカロリーが必要なんだと痛感しています(笑)。
コンテンツの中身や適切な更新頻度を考えたり、魅力的なインタビュー相手をアサインしたり。もっとここに、時間もリソースも割きたいですが…。

あとは、読者の皆さんが求めているコンテンツの傾向も、まだまだ手探りですね。

いいたか:
GMO NIKKOさんは、マーケットが広いからこそ、コンテンツの選別も難しいのかもしれませんね。ちなみに、五十嵐さんにとっていいコンテンツとは何ですか?

五十嵐:
う〜ん…。

コンテンツの作り手も、それを見た人たちも、熱量高く発信できるのがいいコンテンツというのが、僕の中の漠然としたイメージです。

いいたか:
なるほど。

コンテンツの難しい点は、その場ですぐに数字が生まれづらいことだと思います。記事を読んで「すごく感動した!」と思っても、その場で問い合わせが発生することはほとんどないじゃないですか。

だからこそ、目の前の数字に踊らされないことが大切だと思うんですよね。

私はベーシックに勤めていた時、Webマーケティングメディア「ferret」の立ち上げに携わらせていただきました。「ferret」には記事広告のメニューがありましたが、私たちは独自に間接コンバージョンを計測できるようにして、数字を計測したんです。

記事広告の直接コンバージョンって、「正直なかなかでない」と言えるレベルで、多くは発生しません。一方で、間接コンバージョンを計測すると、1ヶ月で100件発生していることも珍しくなかったんです。この数字は私が在籍していた時なので、今はわかりませんが。

読まれた瞬間にはコンバージョンしませんが、記事のことが記憶にさえ残っていれば、将来的な指名検索につながりますから。

こうした姿勢が、メディア側に求められているんだと思います。前職のホットリンクでも、直接追えない数字にこそ、重要な情報が眠っているという考えでメディア運営に携わっていました。

五十嵐:
その姿勢はとても重要ですね。今は時代の流れが早いので、コンテンツに何が求められてるのかは刻一刻と変化していくことでしょう。それでも、「TRUE MARKETING」の目的だった「マーケターにとって価値ある情報を届けていきたい」という思いだけは、ブレずに発信し続けていきたいですね。

広告代理店「以外」の姿をもっと見せたい

いいたか:
五十嵐さんは、今後どんな仕事に取り組んでいきたいですか?

五十嵐:
ふたつ考えています。

ひとつは、自分が発案するということも含めて、新事業に関わる機会を作ることです。広告代理店は、マージンによって利益を得ています。利益率はある程度固定化されているので、急激に利益を伸ばすことは難しいでしょう。

GMO NIKKOがもっと豊かになっていくには、我々が新しい事業を考え、展開していかなくてはなりません。

おかげ様で、今はさまざまなお客様や、ツールベンダーの協力会社の皆さんとの出会いに恵まれています。そこにGMOグループの知見やノウハウも組み合わせて、シナジーを生かしつつ新事業に挑戦していきたいです。

もうひとつは、地方自治体発のコンテンツ発信です。今年はたまたまご縁があり、地方自治体のお客様と仕事をする機会がありました。地方というのは、そこにある自然そのものも含めて、すごくたくさんの熱いコンテンツを持っていると知りました。

地方自治体には、まだまだデジタルが浸透していない領域があります。そこを僕たちがサポートして、コンテンツ発信をお手伝いしていきたいなと。それが、自分自身の成長にもつながると考えています。

もちろん、こうした文脈の中で、会社にも利益を生んでいきたいですね。

いいたか:
新規事業と地方コンテンツの発信。どちらも面白そうですね。

五十嵐:
GMO NIKKOはメタバース事業に参入したり、NFTに取り組み始めるなど、さまざまなチャレンジができる会社になってきました。新しい領域に取り組む仲間を見ていると、こちらも何かやらねばという気持ちにさせられます。

もしかしたら、僕たちは自分たちがこれまで取り組んできたことを、過小評価してきたのではとすら思っているんです。来年はさらに、新しいことに取り組んでいる姿を広く発信していければと思います。

GMO NIKKOが、広告代理店以外でもお客様を支援できるポイントがあるのだということを、もっと伝えられるようになりたいと思っています。僕はマネジメントの立場として、メンバーが発信しやすい環境を用意していきたいですね。

飯髙悠太(いいたかゆうた)
ライター:飯髙悠太(いいたかゆうた)
株式会社GiftX Co-Founder
@yutaiitaka
2022年7月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftX共同創業。
自著は「僕らはSNSでモノを買う」、「BtoBマーケティングの基礎知識」、「アスリートのためのソーシャルメディア活用術」。
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