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【前編】ファミリーマートCMO足立様インタビュー withコロナ、afterコロナの生活者変化に対応するマーケティングとは?~変わらなければいけないこと、変えてはいけないこと~

2021.03.16Premium Contents
【前編】ファミリーマートCMO足立様インタビュー withコロナ、afterコロナの生活者変化に対応するマーケティングとは?~変わらなければいけないこと、変えてはいけないこと~

コロナ禍で、生活者の意識や生活様式は著しく変わった。いずれもとに戻るという憶測はやみ、新しい生活が訪れ、我々は「withコロナ、afterコロナ」を命題に生きている。

変化に伴い、今後、企業やマーケターは何を意識していけばよいのだろうか。変えなければならないもの、変わらないものとは何なのか。日本マクドナルドにて、上級執行役員·マーケティング本部長としてV字回復をけん引し、昨年10月より、大手コンビニエンスストア・ファミリーマートの初代CMOに就任した、トップマーケターの足立光氏に、この変化の時代に対応するマーケティングについて語ってもらった

(右):ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO) 足立 光氏
(左):GMO NIKKO 広告事業本部 マーケティングソリューション2部 エグゼクティブマネージャー 五十嵐 慧氏

コロナによって起きた変化

五十嵐:コロナになり、いろいろなことが変化しました。足立さんから見て、どういうところが一番変わりましたか?

足立:マーケティング側の人間から見て、一番大きく変わったのはメディアだと思います。以前からメディアは、ネット、動画とどんどん分散していく傾向にありましたが、今は、テレビや新聞のリーチが回復してきています。
家で過ごす時間が多くなったので、いわゆるマスメディアが復権したというか、マスメディアの有効性がまた見直されたのかなと思っています。

また、一番わかりやすく変わったのは、交通広告です。昨年4月の渋谷のスクランブル交差点には、誰もいなかったですよね。都心に関しては、まだ以前のように人が動いていませんし、銀座、丸の内あたりも全然人がいない。
つまり、人が集まる場所が変わってしまったんですよね。

そしてその状況は日単位で変わっています。緊急事態宣言やそれに伴う規制、日々の感染状況推移に合わせて、交通量や人の流れが都度変わることを、皆さん経験したと思います。ということは、メディアの効率もそれに連動する形で変わっているということなんです。

先週有効だったメディアが、今週は有効ではない。ここまでリアルタイムに変化が起こることはあまりなかったので、新しいことだと思います。

五十嵐:そうした変化をどういうところで変わったと察知しているんですか?

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足立:私は基本的に一次情報派なんです。だから、メディアの言うことは基本的に「本当かな?」から入っています。

緊急事態宣言中は当然、密は避けながらですが、街を歩くと、このお店はやっている、ここはやっていない、といろいろな情報をキャッチできます。自分の周りの行けるところで何が起こっているのか、できるだけ一生懸命見るというのがひとつです。

あとは、いろいろな方にお会いすること。できれば世代が違う人や、まったく違う仕事をしている人に会って違った視点を持つことを、とても大切にしています。

もうひとつは、常に複数のメディアを見るということ。メディアによってバイアスが確実に存在していて、同じ時間で、例えば日本経済新聞のトップニュース、スマートニュースのトップニュース、ツイッターのトレンドを見比べると、内容がまったく違うんですよ。

ということは、全く同じタイミングで、全く違う情報が、違う人に伝わっているということです。ひとつのメディアだけを見ていたらその一部分しかわかりませんが、全部見ていたら全体像がわかります。

加えて、いくつかの種類のメディアを、国内外含めていくつかは定期的に見ておけば、さらに広い視野を持てます。日本でトップニュースになっていることが、世界ではまったくなっていないことが結構あるんです。そうすると、そのニュースはもしかしたら世界的にはそんなに必要ではないかもしれない、とか自分なりに考えることもできますよね。なので、メディアに関しては、一歩引いていろんなメディアを見て、本当にどれが今必要なニュースだろう、と考えるようにしています。

五十嵐:違う世代の人と会うことで、例えばどのような発見がありますか?

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足立:20代や30代の方にお会いするときは、その方のスマホを見せてもらったり、いろんなことを根掘り葉掘り聞いてみます。何のアプリを入れているのか、週末はどんなことをしているのか、どうやって彼氏・彼女を探しているのか、とか。

彼氏・彼女探しと言えばマッチングアプリ。3年ほど前だと一部の人たちが使いはじめたくらいでしたが、今は様々なサービスがあって、使うことが当たり前になっている。それで結婚している人も少なからずいる。

違う世代の人たちと話すことで、そうした変化が時間の経過とともににわかってくるのが面白いところですね。物事はある日突然変わるのではなく、だんだんゆっくりと変わってくるんです。

五十嵐:ご著書「アフターコロナのマーケティング戦略最重要ポイント40」でも冒頭に確かにゆっくりと変わったことって多くあるなと感じる記述がありました。

足立:afterコロナで変わったことや、変わったように見えることは、たくさんあります。けれど、正直、コロナによって突然変異で何か起こったかと言われると、海外や旅行に行けなくなったこと以外は、おそらくあまり多くないような気がしています。

「人が出歩かなくなった」と言いますけど、実は数年前から人の移動距離はどんどん減っていました。今は皆さん、強制的にテレワークになったので急に変わったように見えますけど、流れという意味では前からあったんです。そういう意味では前からあった流れ、がコロナで加速したということなんだと思います。

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マーケターが押さえておくべき消費者視点

五十嵐:マーケターが消費者のニーズを探る良い方法・やり方など、足立さんの中で確立しているものはありますか?

足立:消費とは欲望です。GoToトラベルの時は抑えられていた消費者の旅行欲が爆発しました。その流れを見ていると消費の源泉はほとんど本能であり、それはどんな時代でも、何があっても変わらないと思います。

また、自分自身が消費者であるという感覚を忘れないことがとても大事です。Webで何かの広告を見て、思わず買ってしまう瞬間がありますよね。その時、何がそうさせたのかを自己分析して、その要素を「何だろう」と考えて、自分の仕事にどう応用できるか考える。この繰り返しに尽きます。

同じように、友達が何かを買ったとき、「その人は何に触れたんだろう」と考えること、その人の中で何が起こっているかを観察するのが大事だと思います。お客様側に立って、自分が自身のビジネスのお客様だったらどう見えるだろうと。常に反対側(お客様の側)にいる感覚を持つといろいろ見えてくるものがあると思います。

五十嵐:我々デジタルエージェンシーがお客様の支援をするときは、リサーチ会社やオープンデータを活用して消費者のインサイトを分析することが多いです。足立さんから見たら、「まずはあなたが体験しなさい」と。マーケターが消費者目線になって体験することの方が大事ということですね?

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足立:いえ、両方大事ですね。自分がまったく想像できない、体験できないビジネスの場合もありますから。体験できる人を信頼するか、そういう調査をやるか、という話だと思います。

ただ、人が調べたことや、人の感覚を信頼しなくてはいけないので、自分としてはその決定にやや自信が持てないかもしれません。

自分が消費者にイタコのように憑依して、できるだけ消費者になりきることがとても大事だと思います。そうすることによって、お客様としての感覚をある程度想像することができると、自分の決定により自信が持てるんじゃないかと思います。

五十嵐:だから、足立さんはご自身で歩いて、ご自身の目で見て、様々な人と話して、いろいろな新しい情報を得ているんですね。

足立:はい。インプットを超えるアウトプットはないんです。本を読む、街を歩いてみる、自分とまったく違う業界の人に会うなど、いかにたくさん、そしてバラエティに富んだインプットをできるか、これに尽きると思っています。ただこれは意識的にやろうと思わないとできないことですね。普通に同じような仕事をしていて、同じような友達と会っていると、どんどんインプットのバラエティがなくなっていく。
意図して自分から動かないと、違った視点に出会い続けることは難しいと思います。

コロナを通じて生まれた新しい価値観

五十嵐:コロナ禍で「こんな価値観が新しく生まれた」と思うものはありますか?

足立:生まれたというか、比較的グローバルに変わったなと思ったのがひとつあります。これまでは共存・共栄・世界平和みたいなことが社会では重視されてきましたが、この数年で明らかに世界より自分の国、自分の国より自分の県、自分の県より自分の家、自分自身が重要という意識が強くなったと思います。

五十嵐:人が、ということですか?

足立:人も、企業も、国も。コロナ禍では自分を何とかすることで精いっぱい。世界平和より自分の国の繁栄、他人の国より自分の国を最優先するというのが明確です。でもこれはコロナによって突然に、というわけではなく、ちょっと前からその流れがじわじわとあって、それがコロナでぐっと加速した感じですよね。

五十嵐:それはafterコロナにおいて、国交や物流も含め、いろいろなものがもとに戻るということはなくなってくるということですか?

足立:ある程度はもとに戻るかもしれませんが、そのときには多くのの国が自国の利益を圧倒的に優先するようになっていると思います。個人という意味でも「ここに赴任したらリスクが高いかも」という国や場所にはたぶん家族は行かせないでしょう。そこに行くことで、もしかして昇進するかもしれないけれど、自分たちの安全を優先する、ということです。

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昔だったらそういう意識ってなかったじゃないですか。なので、自分の安全利益というのが、世界よりだんだん重要になってきたのは大きな意識の変化だと思います。

もうひとつ。皆さん、コロナで健康に気をつけるようになりました。実際シニアの人は「どこに出るのも嫌」と思っているくらい気をつけていらっしゃる方も多いです。けれど、そもそも日本は高齢化社会が進んで、コロナがなくても「健康」に気をつけるシニア層はゆっくり増えていた。コロナはそれをより鮮明にしただけ、という見方もあります。

五十嵐:生活の変化という面においては、いかがでしょうか?

足立:この記事を読んでいる読者の皆さんは、会社に行かなくなってしまったとか、テレワークばかりという人も多いかもしれません。テレワークなので、軽井沢や箱根に引っ越してしまえ、という人もいるかもしれない。けれど、それは圧倒的なマイノリティだと理解したほうがいいです。

緊急事態宣言中でも、朝8時すぎに電車に乗れば、すごく混んでいます。それに、緊急事態宣言中なのは全国で12都道府県しかない。たった1/4です。

自分の周りの目に見えるところの人たちは確かに家から出なくなってしまった。けれど、そうじゃないところでは、たぶんこれまでと全く変わらない生活が普通に行われています。
皆さん、市場を見るときはついつい自分の周りだけを見がちですけど、そうでないところをしっかり見ないと判断を間違えると思います。

後編はこちら

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